少額訴訟の使い方完全ガイド|60万円以下の債権回収【手続き・費用・勝率を解説】
この記事は誰のため?
この記事は、請求額が60万円以下で法的手段を検討している方、少額訴訟とは何かどんな手続きなのか知りたい方に向けて書かれています。また、通常の訴訟との違いを理解したい方や、自分で申立できるか費用・期間を知りたい方にも役立つ内容です。
この記事を読むことで、少額訴訟の全体像、申立の流れ、費用・期間、勝率、手続きの注意点が分かります。
少額訴訟とは?
簡単に言うと
少額訴訟とは、「60万円以下の金銭請求を、1回の審理で迅速に解決する制度」です。
通常の訴訟と違い、原則1回の審理で判決が出るため、早く・安く解決できるのが特徴です。
こんな場合に使える
- ✅ 金銭の支払いを求める場合(60万円以下)
- ✅ 証拠がしっかりしている
- ✅ 早く判決を得たい
- ✅ 費用を抑えたい
注意点
- ❌ 請求額が60万円を超える場合は使えない
- ❌ 相手が「通常訴訟に移行してほしい」と申し出ると、通常訴訟になる
- ❌ 複雑な法的争点がある場合は不向き
少額訴訟のメリット・デメリット
メリット
少額訴訟の最大のメリットは、原則1回の審理で判決が出ることです。通常訴訟は3〜6ヶ月以上かかるのに対し、少額訴訟は1〜2ヶ月で終わり、何度も裁判所に行く必要がありません。
また、手数料が通常訴訟と同じながら、弁護士費用を節約でき、自分で申立・出廷できるため、コストを大幅に抑えられます。
手続きも簡単で、裁判官が分かりやすく進行してくれるため、専門的な法律知識がなくても理解できます。さらに、裁判官が和解を勧めることが多く、その場で分割払いなどの合意ができる即日和解の可能性もあります。
デメリット
一方で、請求額が60万円以下に限定されています。60万円を超える請求には使えませんが、例えば70万円の請求を60万円に減額すれば使えます(残り10万円は放棄)。
また、相手が「少額訴訟ではなく、通常訴訟で争いたい」と申し出ると、自動的に通常訴訟に移行し、審理が長引きます。
証拠は即日提出が原則で、「後日、証拠を追加します」ができません。審理当日に持参した証拠だけで判断されるため、事前の準備が重要です。
さらに、判決に不服がある場合、控訴ではなく「異議申立」しかできず、異議が認められると通常訴訟でやり直しとなります。
少額訴訟の流れ(全体像)
【Step 1】訴状を作成
↓
【Step 2】簡易裁判所に提出
↓
【Step 3】裁判所が期日を指定(約1ヶ月後)
↓
【Step 4】相手に訴状が送達される
↓
【Step 5】審理期日(裁判所で1回の審理)
↓
【Step 6-A】和解成立
→ 解決
↓
【Step 6-B】判決
→ 勝訴すれば、相手に支払い命令
↓
【Step 7】相手が払わない場合、強制執行
通常訴訟に移行した場合
【Step 4-B】相手が通常訴訟への移行を求めた
→ 通常訴訟に切り替わる(数ヶ月〜)
Step 1: 訴状を作成する
必要な情報
少額訴訟の訴状には、原告(あなた)の氏名・住所・電話番号を記載します。法人の場合は会社名・代表者名・本店所在地が必要です。
また、被告(相手)の氏名・住所も必須で、法人の場合は同様に会社名・代表者名・本店所在地を記入します。
請求の内容としては、請求金額(60万円以下)、請求の原因(いつ、何の代金か)、遅延損害金の計算を明記します。
証拠として、請求書、契約書、メール、納品書などを添付します。催促メールの履歴も有効な証拠となります。
訴状のテンプレート
裁判所の公式サイトからダウンロードできます:
手書きでもOKですが、パソコンで作成するのがおすすめです。
Step 2: 簡易裁判所に提出する
提出先
訴状は、被告(相手)の住所地を管轄する簡易裁判所、または契約履行地の簡易裁判所に提出します。例えば、相手が大阪市在住なら大阪簡易裁判所になります。契約履行地(代金を支払う場所)でも提訴できます。
提出方法
裁判所の窓口に直接持参する方法がおすすめです。その場で書類の不備を確認してもらえるため、スムーズに手続きが進みます。
また、書留郵便で送る方法もありますが、不備があると返送されるため時間がかかる可能性があります。
必要な費用
1. 手数料(収入印紙)
| 請求金額 | 手数料 |
|---|---|
| 10万円 | 1,000円 |
| 30万円 | 3,000円 |
| 50万円 | 5,000円 |
| 60万円 | 6,000円 |
2. 送達費用(郵便切手)
- 6,000円程度(裁判所によって異なる)
- 相手への送達と、判決の郵送に使われる
合計: 50万円の請求なら、約11,000円で提訴可能
Step 3: 裁判所が期日を指定
訴状を提出すると、裁判所が審理期日を指定します。
- 期間: 提出から約1ヶ月後
- 場所: 簡易裁判所の法廷
- 時間: 通常30分〜1時間程度
期日通知書が郵送で届くので、必ず確認してください。
Step 4: 相手に訴状が送達される
裁判所が相手に訴状を送達します(特別送達)。
相手はこの時点で、以下の選択肢があります:
- 少額訴訟で争う: 審理期日に出廷して主張を述べる
- 通常訴訟への移行を求める: 少額訴訟ではなく、通常訴訟で争う
- 欠席する: 審理に出廷しない(あなたの主張が認められる可能性が高い)
Step 5: 審理期日(1回の審理)
審理の流れ
1. 原告(あなた)の主張
- 請求の内容、金額、理由を説明
- 証拠を提出(請求書、契約書、メールなど)
2. 被告(相手)の主張
- 相手が反論する場合、主張を述べる
- 相手も証拠を提出できる
3. 裁判官の質問
- 裁判官が双方に質問して、事実関係を確認
4. 和解の勧告
- 裁判官が和解を勧めることが多い
- 分割払い、減額などの条件で合意できる
5. 判決
- 和解が成立しない場合、その場で判決が言い渡される
持参すべきもの
- 証拠のコピー(裁判所・相手・自分用の3部)
- 訴状のコピー
- 身分証明書
- 印鑑
- 筆記用具
服装
- スーツである必要はない
- 清潔感のある服装であればOK
Step 6: 判決または和解
パターンA: 和解成立(約60〜70%)
裁判官が和解を勧め、双方が合意した場合、和解調書が作成されます。
和解のメリット
- 判決を待たずに解決
- 分割払いなど、柔軟な条件を設定できる
- 和解調書は判決と同じ効力がある(強制執行可能)
和解の例
- 「被告は原告に対し、50万円を毎月5万円ずつ分割で支払う」
- 「被告は原告に対し、40万円を支払う(残り10万円は免除)」
パターンB: 判決(約30〜40%)
和解が成立しない場合、裁判官が判決を言い渡します。
勝訴した場合
- 相手に支払いを命じる判決が出る
- 判決確定後、相手が払わなければ強制執行できる
敗訴した場合
- 請求が棄却される
- 異議申立をすると、通常訴訟でやり直しできる
Step 7: 強制執行
判決や和解調書が確定しても、相手が支払わない場合、強制執行を申し立てます。
強制執行とは?
相手の財産を差し押さえて、強制的に回収する手続き
差し押さえできる財産:
- 銀行口座
- 給与
- 不動産
- 売掛金
- 動産(車、貴金属など)
強制執行の申立方法
必要な情報
- 相手の財産の情報(銀行口座、勤務先など)
- 判決正本または和解調書
- 送達証明書
費用
- 申立手数料: 4,000円程度
- 郵便切手: 2,000円程度
期間
- 申立から1〜2週間で差し押さえが実行される
少額訴訟の費用まとめ
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 手数料(収入印紙) | 1,000円〜6,000円 |
| 送達費用(郵便切手) | 6,000円程度 |
| 交通費(裁判所往復) | 実費 |
| 強制執行の申立 | 4,000円程度 |
| 合計 | 約11,000円〜16,000円 |
弁護士費用は不要(自分で対応できる場合)
少額訴訟の期間まとめ
| ステップ | 期間 |
|---|---|
| 訴状提出〜期日指定 | 1週間程度 |
| 期日指定〜審理 | 約1ヶ月 |
| 審理〜判決 | 即日 |
| 判決確定 | 2週間 |
| 合計 | 約1〜2ヶ月 |
通常訴訟との比較: 通常訴訟は3〜6ヶ月以上
少額訴訟の勝率は?
勝率の目安
証拠がしっかりしている場合、勝率は約80〜90%です。具体的には、請求書、契約書、納品書などの証拠があり、催促メールの履歴が残っており、相手が欠席した場合などが該当します。
一方、証拠が弱い場合は勝率50%以下となります。口約束のみで書面がない場合、証拠が不十分な場合、相手が強く争ってくる場合などです。
勝率を上げるポイント
まず、請求書、契約書、納品書に加えて、メールやLINEのやり取り、催促の履歴(メール、電話記録)など、証拠をしっかり準備することが重要です。
特に、「何度も催促したが、支払われなかった」という事実が重要で、メールの送信記録や内容証明の控えなどの催促の履歴を残しておきましょう。
また、請求額や遅延損害金を正確に計算し、計算の根拠を明確にすることも大切です。さらに、相手がどんな反論をしてくるか予測して、事前に反論を準備しておくことで、審理をスムーズに進められます。
よくある質問(FAQ)
Q1: 少額訴訟と通常訴訟、どちらを選ぶべき?
A: 以下の基準で判断してください。
少額訴訟がおすすめ
- 請求額が60万円以下
- 証拠がしっかりしている
- 早く解決したい
- 費用を抑えたい
通常訴訟がおすすめ
- 請求額が60万円を超える
- 複雑な法的争点がある
- 相手が強く争ってくる可能性が高い
Q2: 相手が欠席した場合はどうなる?
A: あなたの主張が認められる可能性が高くなります。
- 相手が欠席すると、相手の反論がないため、あなたの主張が通りやすい
- ただし、証拠がしっかりしていることが前提
Q3: 相手が通常訴訟への移行を求めた場合は?
A: 自動的に通常訴訟に移行します。
- 相手が「少額訴訟ではなく、通常訴訟で争いたい」と申し出ると、通常訴訟に切り替わる
- 審理が長引くため、弁護士に相談することを推奨
Q4: 判決に不服がある場合は?
A: 異議申立ができます。
- 判決から2週間以内に異議を申し立てると、通常訴訟でやり直しできる
- 控訴はできない(少額訴訟の特徴)
Q5: 弁護士に頼むべき?
A: 証拠がしっかりしていれば、自分で対応できます。
- 少額訴訟は裁判官が分かりやすく進行してくれるため、弁護士なしでも可能
- ただし、相手が弁護士を立ててきた場合は、こちらも弁護士に相談することを推奨
Q6: 60万円を超える請求はどうすれば?
A: 以下の選択肢があります。
選択肢1: 60万円に減額して少額訴訟を使う(残りは放棄) 選択肢2: 通常訴訟を提起する 選択肢3: 支払督促を使う
少額訴訟を使うべきケース・使わないべきケース
使うべきケース
- ✅ 請求額が60万円以下
- ✅ 証拠がしっかりしている(請求書、契約書、メールなど)
- ✅ 早く判決を得たい
- ✅ 費用を抑えたい
- ✅ 相手が争ってこない可能性が高い
使わないべきケース
- ❌ 請求額が60万円を超える
- ❌ 証拠が弱い(口約束のみなど)
- ❌ 複雑な法的争点がある
- ❌ 相手が強く争ってくる可能性が高い
少額訴訟と支払督促の違い
| 項目 | 少額訴訟 | 支払督促 |
|---|---|---|
| 請求額 | 60万円以下 | 制限なし |
| 審理 | 1回の審理がある | 審理なし(書面のみ) |
| 相手の反論 | 審理で反論できる | 異議を出すと訴訟に移行 |
| 期間 | 1〜2ヶ月 | 1〜2ヶ月(異議がない場合) |
| 費用 | 約11,000円〜 | 約9,000円〜 |
| おすすめ | 相手が争ってくる可能性がある | 相手が異議を出さない可能性が高い |
選び方のポイント
- 相手が争ってくる可能性が高い → 少額訴訟
- 相手が異議を出さない可能性が高い → 支払督促
必要書類チェックリスト
訴状提出時に必要な書類
- 訴状(3通:裁判所・相手・自分用)
- 証拠のコピー(3部)
- 収入印紙(手数料分)
- 郵便切手(送達費用分)
- 原告(あなた)の印鑑
審理当日に持参するもの
- 期日通知書
- 証拠の原本
- 訴状のコピー
- 身分証明書
- 印鑑
- 筆記用具
強制執行時に必要な書類
- 判決正本または和解調書
- 送達証明書
- 相手の財産に関する資料(銀行口座、勤務先など)
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 請求額 | 60万円以下 |
| 費用 | 約11,000円〜16,000円 |
| 期間 | 1〜2ヶ月 |
| 勝率 | 証拠がしっかりしていれば80〜90% |
| メリット | 原則1回の審理で判決、早い、安い |
| デメリット | 60万円以下限定、相手が通常訴訟に移行を求めると切り替わる |
少額訴訟は、60万円以下の金銭請求を迅速に解決できる有効な手段です。証拠をしっかり準備すれば、自分で対応できます。
参考情報
本記事は以下の公的情報に基づいて作成されています:
- 民法(債権関係)改正(2020年4月1日施行)
- 民事訴訟法
- 裁判所|支払督促
- 裁判所|少額訴訟
免責事項
重要な注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。
- 個別の状況に応じて、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。
- 本記事の内容をそのまま使用した結果生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いません。
- 少額訴訟の手続きは裁判所のルールに従う必要があります。不明点は裁判所に確認してください。
最終更新: 2025年11月12日
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