支払督促の完全ガイド|手続きの流れ・費用・期間・必要書類を徹底解説【自分でできる】
この記事は誰のため?
この記事は、何度催促しても支払ってもらえず法的手段を検討している方、支払督促とは何かどんな手続きなのか知りたい方に向けて書かれています。また、弁護士に頼まず自分で支払督促を申し立てたい方や、費用・期間・必要書類など具体的な手順を理解したい方にも役立つ内容です。
この記事を読むことで、支払督促の全体像、申立の流れ、費用・期間、必要書類、異議申立への対応方法が分かります。
支払督促とは?
簡単に言うと
支払督促とは、「裁判を開かずに、裁判所が相手に支払いを命じる制度」です。
通常の裁判と違い、書類審査だけで進むため、費用が安く、手続きが簡単なのが特徴です。
こんな場合に使える
- ✅ 金銭の支払いを求める場合(商品代金、サービス料金、貸したお金など)
- ✅ 相手の住所が分かっている
- ✅ 証拠(請求書、契約書、メールなど)がある
- ✅ 相手が異議を申し立てない可能性が高い
注意点
- ❌ 相手が異議を申し立てると、通常訴訟に移行する
- ❌ 相手の住所が不明だと申立できない
- ❌ 金銭以外の請求(物の引き渡しなど)には使えない
支払督促のメリット・デメリット
メリット
支払督促の最大のメリットは費用が安いことです。訴訟の手数料の半額で済むため、例えば100万円の請求の場合、訴訟なら1万円かかるところ、支払督促なら5,000円で済みます。
また、手続きが簡単で、申立書を裁判所に提出するだけで完結します。裁判所に行く必要がなく、弁護士なしでも自分で申立できるのも大きな利点です。
さらに、申立から2週間〜1ヶ月程度で仮執行宣言が出るため、通常訴訟より大幅に早く解決できます。
デメリット
一方で、相手が異議を申し立てると通常訴訟に自動的に移行してしまいます。相手が「払いません」と異議を出した場合、最初から訴訟手続きをやり直す必要があります。
また、相手の正確な住所が分からないと申立できないため、夜逃げ・行方不明の場合は使えません。
さらに、支払督促が確定しても相手が任意で払わない場合は、別途強制執行の手続きが必要となり、時間がかかります。
支払督促の流れ(全体像)
【Step 1】申立書を作成
↓
【Step 2】簡易裁判所に提出(郵送可)
↓
【Step 3】裁判所が相手に支払督促を送達
↓
【Step 4-A】相手が2週間以内に異議を出さない
→ 仮執行宣言の申立
↓
【Step 5】仮執行宣言付き支払督促が確定
↓
【Step 6】相手が払わない場合、強制執行を申立
異議が出た場合
【Step 4-B】相手が異議を申し立てた
→ 通常訴訟に移行
Step 1: 申立書を作成する
必要な情報
支払督促申立書には、債権者(あなた)の氏名・住所・電話番号を記載します。法人の場合は会社名・代表者名・本店所在地が必要です。
また、債務者(相手)の氏名・住所も必須で、法人の場合は同様に会社名・代表者名・本店所在地を記入します。特に重要なのは、住所が不正確だと却下されるため、正確な情報が必要という点です。
さらに、請求の内容として、請求金額、請求の原因(いつ、何の代金か)、遅延損害金の有無と計算方法を明記します。
申立書のテンプレート
裁判所の公式サイトからダウンロードできます:
手書きでもOKですが、パソコンで作成するのがおすすめです。
Step 2: 簡易裁判所に提出する
提出先
支払督促は、相手の住所地を管轄する簡易裁判所に提出します。例えば、相手が東京都渋谷区在住なら東京簡易裁判所になります。管轄は裁判所のウェブサイトで検索できます。
提出方法
最も一般的な方法は郵送で、書留郵便で送ります。また、裁判所の窓口に直接持参する方法もあり、その場で書類の不備を確認してもらえるというメリットがあります。
必要な費用
1. 手数料(収入印紙)
| 請求金額 | 手数料 |
|---|---|
| 10万円 | 500円 |
| 50万円 | 2,500円 |
| 100万円 | 5,000円 |
| 200万円 | 1万円 |
2. 送達費用(郵便切手)
- 4,000円程度(裁判所によって異なる)
- 相手への送達と、通知の郵送に使われる
合計: 10万円の請求なら、約4,500円で申立可能
Step 3: 裁判所が相手に支払督促を送達
何が起こる?
申立書を提出すると、裁判所が内容を審査し、問題がなければ支払督促正本を相手に送達します。
- 送達方法: 特別送達(確実に相手に届く郵便)
- 期間: 申立から1〜2週間程度
相手に届く内容
「○○円を支払え」という裁判所からの命令
相手はこれを受け取った時点で、2つの選択肢があります:
- 支払う: この時点で支払えば、すべて解決
- 異議を申し立てる: 2週間以内に異議を出す
Step 4: 相手の反応を待つ
パターンA: 相手が異議を出さない(約50〜60%)
相手が2週間以内に異議を出さなかった場合、あなたは「仮執行宣言」を申し立てます。
仮執行宣言の申立
- 支払督促が送達されてから2週間後に申立可能
- 費用: 収入印紙500円程度
- 期間: 申立から1〜2週間で発令
仮執行宣言が出ると、強制執行が可能になります。
パターンB: 相手が異議を出した(約40〜50%)
相手が「払いません」と異議を申し立てた場合、支払督促は効力を失い、通常訴訟に移行します。
この場合どうなる?
- 自動的に訴訟手続きに切り替わる
- 新たに訴状を出す必要はない
- ただし、訴訟の手数料(支払督促との差額)を追加で払う必要がある
訴訟に移行したら?
- 裁判所での口頭弁論が開かれる
- 証拠を提出して主張を行う
- 弁護士に依頼することを強く推奨
Step 5: 仮執行宣言付き支払督促が確定
仮執行宣言が出ると、債務名義が確定します。
債務名義とは?
- 「この人はこの金額を支払う義務がある」という法的な証拠
- これがあると、強制執行(差し押さえ)ができる
相手が任意で支払えば終了
この時点で相手が支払えば、すべて解決です。
支払いを確認したら、取下書を裁判所に提出して手続きを終了させます。
Step 6: 強制執行を申し立てる
相手が仮執行宣言後も支払わない場合、強制執行を申し立てます。
強制執行とは?
相手の財産を差し押さえて、強制的に回収する手続き
差し押さえできる財産:
- 銀行口座
- 給与
- 不動産
- 売掛金
- 動産(車、貴金属など)
強制執行の申立方法
必要な情報
- 相手の財産の情報(銀行口座、勤務先など)
- 仮執行宣言付き支払督促の正本
- 送達証明書
費用
- 申立手数料: 4,000円程度
- 郵便切手: 2,000円程度
期間
- 申立から1〜2週間で差し押さえが実行される
注意点
相手の財産が不明だと執行できない
強制執行は、相手の具体的な財産(銀行口座、勤務先など)を特定する必要があります。
- 相手の財産が分からない場合、「財産開示手続き」を申し立てることができる
- ただし、相手が正直に申告しない場合もある
支払督促の費用まとめ
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 500円〜(請求額による) |
| 送達費用(郵便切手) | 4,000円程度 |
| 仮執行宣言の申立 | 500円程度 |
| 強制執行の申立 | 4,000円程度 |
| 合計 | 約9,000円〜 |
訴訟との比較
- 訴訟(100万円の請求): 手数料1万円+弁護士費用30〜50万円
- 支払督促: 手数料5,000円+自分で申立可能
支払督促の期間まとめ
| ステップ | 期間 |
|---|---|
| 申立〜支払督促の送達 | 1〜2週間 |
| 相手の異議申立期間 | 2週間 |
| 仮執行宣言の申立〜発令 | 1〜2週間 |
| 強制執行の申立〜実行 | 1〜2週間 |
| 合計(スムーズな場合) | 約1〜2ヶ月 |
異議が出た場合: 訴訟に移行するため、さらに3〜6ヶ月以上
必要書類チェックリスト
申立時に必要な書類
- 支払督促申立書
- 請求の原因を証明する書類(請求書、契約書、納品書など)
- 収入印紙(手数料分)
- 郵便切手(送達費用分)
- 債権者(あなた)の印鑑
- 相手の住所が分かる資料(住民票の写しなど)※任意
仮執行宣言の申立時に必要な書類
- 仮執行宣言申立書
- 収入印紙(500円程度)
- 支払督促送達証明書(裁判所が発行)
強制執行の申立時に必要な書類
- 強制執行申立書
- 仮執行宣言付き支払督促の正本
- 送達証明書
- 相手の財産に関する資料(銀行口座、勤務先など)
よくある質問(FAQ)
Q1: 支払督促と訴訟、どちらを選ぶべき?
A: 以下の基準で判断してください。
支払督促がおすすめ
- 相手が異議を出さない可能性が高い
- 請求額が少額(50万円以下)
- 費用を抑えたい
- 証拠がしっかりしている
訴訟がおすすめ
- 相手が争ってくる可能性が高い
- 請求額が大きい(100万円以上)
- 相手の主張を聞いて判断してほしい
Q2: 相手が引っ越した場合はどうなる?
A: 支払督促は相手の住所地の簡易裁判所に申し立てる必要があります。
- 相手が引っ越していて、送達できない場合、支払督促は失効します
- 住民票を取得して、現在の住所を確認することをおすすめします
Q3: 異議が出たらどうすればいい?
A: 自動的に訴訟に移行します。
- 訴訟手続きに切り替わるため、弁護士に相談することを強く推奨
- 訴訟の手数料(支払督促との差額)を追加で払う必要がある
Q4: 支払督促が確定しても相手が払わない場合は?
A: 強制執行を申し立てます。
- 相手の銀行口座、給与、不動産などを差し押さえることができる
- ただし、相手の財産が不明だと執行できない
Q5: 自分で申立できる?弁護士に頼むべき?
A: 支払督促は自分で申立可能です。
- 書類さえ揃えば、弁護士なしでも手続きできる
- ただし、異議が出て訴訟に移行した場合は、弁護士に相談することを推奨
支払督促を使うべきケース・使わないべきケース
使うべきケース
- ✅ 請求額が明確で、証拠がある
- ✅ 相手が異議を出さない可能性が高い
- ✅ 相手の住所が正確に分かっている
- ✅ 費用を抑えたい
- ✅ 早く解決したい
使わないべきケース
- ❌ 相手が絶対に争ってくる(異議を出す可能性が高い)
- ❌ 相手の住所が不明
- ❌ 金銭以外の請求(物の引き渡しなど)
- ❌ 相手が倒産・破産している
支払督促の次のステップ
相手が支払わない場合
支払督促が確定しても相手が払わない場合:
- 強制執行を検討 → 相手の財産を差し押さえ
- 弁護士に相談 → 財産調査や回収戦略を相談
- 回収を諦める → 費用対効果を考えて判断
異議が出た場合
訴訟に移行した場合:
- 弁護士に相談 → 訴訟は専門知識が必要
- 和解を検討 → 裁判所が仲裁して和解を勧めることもある
- 判決を待つ → 裁判で勝訴すれば、強制執行が可能
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 約9,000円〜(訴訟の半額以下) |
| 期間 | 1〜2ヶ月(スムーズな場合) |
| メリット | 費用が安い、手続きが簡単、早い |
| デメリット | 相手が異議を出すと訴訟に移行 |
| おすすめ | 請求額が少額で、証拠がある場合 |
支払督促は、費用を抑えて早く解決できる有効な手段です。ただし、相手が異議を出すと訴訟に移行するため、その場合は弁護士に相談することを推奨します。
参考情報
本記事は以下の公的情報に基づいて作成されています:
- 民法(債権関係)改正(2020年4月1日施行)
- 民事訴訟法
- 裁判所|支払督促
- 裁判所|少額訴訟
免責事項
重要な注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。
- 個別の状況に応じて、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。
- 本記事の内容をそのまま使用した結果生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いません。
- 支払督促の手続きは裁判所のルールに従う必要があります。不明点は裁判所に確認してください。
最終更新: 2025年11月12日
次のステップ
少額案件なら少額訴訟も検討
弁護士に相談すべきか判断したい方
全体のフローを確認したい方
いまのあなたはどちら?
フェーズ1
まだ関係を維持しながら催促したい
1〜2回目の催促段階で、相手との関係を維持しながら入金を促したい方
- ✓未入金案件を自動でリスト化
- ✓催促メールをテンプレで送信
- ✓対応履歴を自動記録
フェーズ2
法的手続きを検討している
2〜3回催促しても反応がなく、内容証明や法的手続きを検討している方
- ✓弁護士・司法書士による無料相談
- ✓回収可能性を客観的に判断
- ✓内容証明〜訴訟まで代行可能
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