経理担当者が知るべき未払い対応の社内フロー|上司への報告タイミング
この記事は誰のため?
この記事は、以下のような状況でお困りの方に向けて書かれています:
- 未払いが発生したが、社内で誰にどう報告すべきかわからない
- 営業部門と経理部門の連携がうまくいかない
- どの段階で上司に報告すべきか判断に迷う
- 未払い対応の記録をどう残すべきかわからない
未払い対応は、社内フローが整っているかどうかで回収率が大きく変わります。この記事では、経理担当者が実務で使える社内フローと報告のタイミングを解説します。
社内フローが整っていないリスク
適切な社内フローがないと、様々な問題が発生します。
まず、回収が遅れてしまいます。誰が対応すべきか不明確なため、「とりあえず様子を見よう」という判断になりがちで、対応が後手に回ります。
また、情報が共有されないことも大きな問題です。営業部門と経理部門で情報が分断され、重複して連絡してしまったり、逆に誰も連絡しなかったりします。
さらに、法的手続きのタイミングを逃すリスクもあります。エスカレーションが遅れると、時効が迫ってしまうこともあります。
そして最悪なのが、社内で責任のなすり合いが起こることです。「それは営業の責任だろ」「いや、経理が管理すべきだ」と対立してしまい、結局誰も動かなくなります。
興味深いデータがあります。適切な社内フローを整備すると、回収率が30〜40%向上するという調査結果があるのです。フロー整備は確実に効果があります。
未払い対応の基本フロー
ステップ1: 未払いの発見
経理担当者が最初に行うのは、入金確認と未払いの発見です。
入金確認はどのくらいの頻度で行うべきか
毎日確認するのが理想ですが、現実的には作業負担が大きくなります。一方で週1回だと、発見が遅れてしまいます。
推奨は、月末・月初は毎日確認し、それ以外の期間は週1回確認するという方法です。入金が集中する時期だけ頻度を上げることで、効率的に管理できます。
入金予定表との照合作業
入金予定表(請求書一覧)と銀行の入金記録を照合します。
チェックすべきポイントは3つです。請求金額と入金金額が一致しているか、振込依頼人名が正しいか(取引先名と異なる場合があります)、そして未入金の案件をリストアップすることです。

未払いリストを作成する
未払いが発覚したら、情報を整理してリスト化しましょう。記録すべき項目は、取引先名、請求金額、支払期日、経過日数、担当者名(営業担当者)、対応状況です。
このリストがあれば、誰が見ても状況がわかり、引き継ぎもスムーズになります。
ステップ2: 営業担当者への連絡
未払いを発見したら、まず営業担当者に情報を共有します。
なぜ営業担当者に先に連絡するのか?
営業担当者は取引先と直接やり取りしているため、大きなメリットがあります。
まず、関係性を活かした柔らかい催促ができます。経理から直接連絡するよりも、普段から付き合いのある営業担当者から連絡する方が、相手も応じやすいものです。
また、取引先の事情を把握しています。担当者が異動したとか、最近経営状況が厳しいといった情報は、営業担当者の方が詳しく知っています。
そして、今後の取引継続を考慮した対応ができます。強硬な催促で関係が壊れてしまうと、将来の取引にも影響するため、営業の視点が必要です。
どの方法で連絡するか
連絡方法は3つあります。
メールは記録が残り、複数案件をまとめて連絡できるので便利です。チャットは迅速でカジュアルなやり取りができます。口頭は緊急時や少額案件に向いています。
状況に応じて使い分けましょう。
連絡テンプレート(メール)
件名: 【経理】未入金のご確認(〇〇株式会社)
営業部 〇〇様
お疲れ様です。経理の〇〇です。
下記の案件につきまして、支払期日を過ぎておりますが
入金を確認できておりません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【未入金案件】
・取引先: 〇〇株式会社
・請求金額: 100,000円
・請求書番号: INV-202501-001
・支払期日: 2025年1月31日(3日経過)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お手数ですが、取引先にご確認いただけますでしょうか。
何かご事情がありましたら、お知らせください。
よろしくお願いいたします。
ステップ3: 経理から直接催促
営業担当者が対応しない、または対応できない場合、経理が直接催促に乗り出します。
どんなときに経理が直接催促すべきか
経理が直接催促すべき状況はいくつかあります。
営業担当者に連絡したのに1週間以内に対応してくれない場合、待っていても時間の無駄です。営業担当者が退職・異動してしまった場合も、経理が動くしかありません。
また、営業担当者が「自分では対応できない」と言うケースもあります。取引先との関係が微妙な場合、営業が動きづらいこともあるのです。
少額案件で営業の手を煩わせたくない場合も、経理が直接対応する方が効率的です。
経理から送る催促メールの例
件名: お支払い期日経過のご確認
〇〇株式会社
経理部 〇〇様
いつもお世話になっております。
株式会社△△ 経理部の△△です。
下記の請求書につきまして、お支払い期日を過ぎておりますが
ご入金を確認できておりません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・請求書番号: INV-202501-001
・ご請求金額: 100,000円
・お支払い期日: 2025年1月31日(既に7日経過)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
すでにお手続き済みの場合は、行き違いで失礼いたしました。
お手続きがまだの場合は、ご確認をお願いいたします。
【お振込先】
銀行名: 〇〇銀行
支店名: 〇〇支店
口座番号: 1234567
何卒よろしくお願いいたします。
ステップ4: 上司への報告
一定の基準を満たした場合、上司に報告します。
どんなときに報告すべきか
報告すべき状況は5つあります。いずれかに該当したら、上司に相談しましょう。
2回催促しても反応がない場合、もう自分だけでは対処できません。金額が10万円以上の場合(会社の基準によります)も、上司の判断を仰ぐべきです。
相手から「支払えない」と言われた場合は、すぐに報告が必要です。取引先が倒産しそうな兆候がある場合や、担当者と連絡が取れない場合も同様です。

報告が早すぎる例
逆に、報告が早すぎる例もあります。
1回目の催促前に報告するのは早すぎます。支払期日から3日以内もまだ様子を見るべきです。少額案件(1万円以下)も、自分で対応できる範囲です。
タイミングを見極めることが大切です。
報告フォーマット
件名: 【未払い案件報告】〇〇株式会社(10万円)
経理部長 〇〇様
お疲れ様です。経理の〇〇です。
下記の未払い案件につきまして、ご報告いたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【案件情報】
・取引先名: 〇〇株式会社
・請求金額: 100,000円
・支払期日: 2025年1月31日(既に14日経過)
・請求書番号: INV-202501-001
【催促履歴】
・2月3日: 営業担当者(〇〇)に連絡
・2月7日: 経理から直接メール送付(1回目)
・2月14日: 経理から直接メール送付(2回目)
【相手の反応】
・すべて無視(返信なし)
【次のアクション案】
・内容証明郵便の送付
・法的手続きの検討
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご指示をいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
ステップ5: 法的手続きの検討
上司の判断により、法的手続きを検討します。
検討すべき状況
- 催促を3回以上しても反応がない
- 支払期日から1ヶ月以上経過
- 相手が「支払わない」と明言
- 金額が50万円以上
弁護士への相談タイミング
- 100万円以上の案件
- 相手が倒産しそう
- 内容証明を送っても反応がない
詳しくは弁護士費用の相場をご覧ください。
営業部門との連携方法
営業と経理の役割分担
営業部門と経理部門で、それぞれ得意分野が異なります。
初回催促と取引先との関係維持は営業部門の役割です。一方、入金管理、記録の作成・保管、法的手続きの準備、上司への報告は経理部門が担当します。
この役割分担を明確にしておくことで、スムーズに連携できます。
連携がうまくいかないケース
ケース1: 営業が「自分が対応する」と言って放置
よくあるのが、営業が「自分が対応するから」と言いながら、実際には何もしないパターンです。経理側も「営業が対応すると言ったし...」と待ってしまい、時間だけが経過します。
解決策は、社内ルールで「〇日以内に対応」と期限を設定することです。期限を過ぎたら、経理が直接催促に動きます。
ケース2: 経理が営業に丸投げ
逆のパターンもあります。経理が「これは営業が対応すべきだろ」と丸投げし、営業が「いや、経理の仕事だろ」と反発するケースです。
解決策は、役割分担を明確にすることです。さらに、金額や期間で自動的に経理主導に切り替わるルールを設定しておくと、判断に迷いません。
ケース3: 情報共有がない
もう一つよくあるのが、情報共有がないケースです。営業が取引先と直接やり取りして、経理に情報が来ない。そして経理が知らずに催促し、営業が「聞いてないぞ!」と怒るパターンです。
解決策は、共有の管理表を使うことです。ExcelやGoogleスプレッドシートで、誰でも状況を確認できるようにしましょう。定期的なミーティング(週1回など)も効果的です。
エスカレーション基準
金額基準
| 金額 | 対応者 | 報告先 |
|---|---|---|
| 1万円未満 | 経理担当者 | 報告不要 |
| 1〜10万円 | 経理担当者 | 課長に報告(反応がない場合) |
| 10〜50万円 | 経理担当者 | 課長に報告(必須) |
| 50〜100万円 | 課長 | 部長に報告 |
| 100万円以上 | 部長 | 経営者に報告 |
期間基準
| 経過期間 | アクション |
|---|---|
| 支払期日から3日 | 営業担当者に連絡 |
| 支払期日から1週間 | 経理から直接催促 |
| 支払期日から2週間 | 2回目の催促 |
| 支払期日から1ヶ月 | 上司に報告 |
| 支払期日から2ヶ月 | 法的手続き検討 |
| 支払期日から3ヶ月 | 弁護士相談 |
状況基準(即座に上司へ報告)
⚠️ 即座に上司に報告すべき状況:
- 相手が倒産しそう
- 相手が「支払わない」と明言
- 詐欺の疑い
- 担当者が逃げた・夜逃げした
記録の残し方
何を記録すべきか
すべての催促・やり取りを記録することが重要です。
記録すべき項目は、日時、催促方法(メール、電話、訪問)、誰が誰に連絡したか、相手の反応、次回予定です。
この記録があれば、後から見返したときに「いつ何をしたか」が一目瞭然になります。
記録フォーマットの例
Excelで管理する場合、以下のような形式が便利です。
日付、取引先名、金額、対応者、方法、相手の反応、次回予定を列に並べます。例えば、「2/3、〇〇株式会社、10万円、営業A、メール、『確認します』、2/10」といった形です。
こうすることで、案件ごとの経過が追いやすくなります。
記録は法的な証拠になる
法的手続きに進む場合、催促の記録が重要な証拠になります。
証拠として使えるのは、メールの送受信履歴、電話の通話記録(日時・内容をメモしたもの)、訪問記録(日時・対応者・会話内容)、内容証明郵便の控えなどです。
「記録を取っておけばよかった...」と後悔しないよう、最初からしっかり記録しましょう。
社内ルールの整備方法
未払い対応マニュアルの作成
社内で統一したルールを作成します。
マニュアルに含めるべき内容:
- 誰が、いつ、何をするか
- 報告フォーマット
- エスカレーション基準
- 記録の残し方
- 法的手続きの判断基準
定期的な見直し
- 半年〜1年に1回、マニュアルを見直す
- 実際の運用での問題点を反映
- 法改正や業界慣習の変化に対応
よくある質問(FAQ)
Q1. 営業担当者が「自分が対応する」と言った場合は?
A. 期限を設定しましょう。 「〇日までに対応をお願いします。それまでに進展がなければ経理から直接連絡します」と伝えます。
Q2. 上司が忙しくて報告できない場合は?
A. メールで報告し、記録を残しましょう。 「ご多忙中恐縮ですが、ご確認をお願いします」と送り、返信がなくても記録として残ります。
Q3. 記録はいつまで保存すべき?
A. 最低5年間(債権の時効期間)保存します。 法的手続きに進む可能性を考慮し、長期保存が推奨されます。
Q4. 少額案件でも上司に報告すべき?
A. 金額だけでなく、状況も考慮します。 少額でも、相手が「支払わない」と明言した場合や、詐欺の疑いがある場合は報告します。
まとめ: 社内フローチェックリスト
未払い発見時の対応フロー
未払い発見
↓
営業担当者に連絡(3日以内)
↓ 反応なし・対応なし
経理から直接催促(1週間後)
↓ 反応なし
2回目の催促(2週間後)
↓ 反応なし
上司に報告(1ヶ月後)
↓
法的手続き検討(2ヶ月後)
重要なポイント
- 役割分担を明確にする(営業と経理)
- 期限を設定する(〇日までに対応)
- 記録を残す(すべてのやり取り)
- エスカレーション基準を守る(金額・期間・状況)
- 定期的に見直す(マニュアルの改善)
社内フローが整っていれば、未払い対応はスムーズに進みます。今すぐ社内で統一ルールを作成しましょう。
次のステップ
社内フローを整えた後、具体的な催促方法について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の状況に応じて、弁護士などの専門家にご相談ください。
最終更新: 2025年11月18日
催促メールの作成、毎回大変ではありませんか?
請求書の送付から入金確認、催促メールの送信まで、請求・入金管理を一元化できるツールがあります。
- ✓請求書の送付から入金確認まで自動化
- ✓未入金案件を自動でリスト化、対応状況を一目で把握
- ✓催促メールテンプレをワンクリックで送信
- ✓経営者や上司にリアルタイムで未回収状況を共有
まずは無料トライアルで、請求・入金業務の効率化を実感してください。
MakeLeapsを無料で試す →※ 実績5,400社以上・リコーグループの請求管理クラウド
※ 当サイトはアフィリエイト広告を掲載しています