フリーランス・個人事業主の未払い対策|契約書なしでも回収できる?
この記事は誰のため?
フリーランスや個人事業主として働いている、契約書なしで仕事を受けてしまった、クライアントから報酬が支払われない、少額の未払いが多い。そんな悩みを抱えている方に向けて、この記事を書きました。
この記事を読むことで、フリーランス特有の未払い対策と、契約書がなくても回収する方法がわかります。
フリーランスが未払いに遭いやすい理由
フリーランスや個人事業主は、法人と比べて未払いに遭いやすい傾向があります。その理由を理解しておくことが、対策の第一歩です。

理由1: 契約書を作成していない
フリーランスの多くは、口頭やメール、チャットだけで仕事を受けています。契約書を作る習慣がなかったり、「契約書がなくても大丈夫」と思っていたり、クライアントから「契約書は不要」と言われたりするためです。証拠が残りにくく、トラブルになりやすいのが問題です。
理由2: 立場が弱い
フリーランスはクライアントより立場が弱いことが多いです。「次の仕事がもらえなくなる」と強く言えなかったり、クライアントが大企業だと萎縮してしまったり、「我慢すれば次の仕事がもらえる」と期待してしまったりします。
理由3: 少額案件が多い
フリーランスの仕事は、10万円以下の少額案件が多い傾向があります。弁護士費用が回収額を上回ってしまうため、「諦めた方が早い」と思ってしまいます。少額だからこそ、相手も軽く見るという側面もあります。
理由4: 成果物の検収基準が曖昧
成果物の検収基準が曖昧だと、支払い拒否の口実にされます。「イメージと違う」と言われて支払い拒否されたり、修正依頼が無限ループになったり、「これでは使えない」と一方的に判断されたりすることがあります。
契約書がない場合でも回収できる?
結論: 回収は可能
口頭契約でも法的には有効です。契約書がなくても、未払い金を回収することは可能です。
ただし、証拠が重要です。
必要な証拠
契約書がない場合でも、メール・チャットのやり取り、見積書、請求書、納品物(成果物)、入金実績(過去の取引)などの証拠があれば、回収できる可能性があります。要は、仕事をしたという事実と、金額の合意があったことを証明できればいいのです。
証拠の残し方
メール・チャットの証拠能力
メールやチャットのやり取りも、契約の証拠として有効です。
証拠として有効なやり取り
「〇〇の仕事を△万円でお願いします」「承知しました。納期は〇月〇日です」といった内容や、納品完了の報告と受領確認などが明確に記載されていれば、証拠として強いです。
具体例:
クライアント: 「LP制作を30万円でお願いできますか? 納期は1月末で。」
あなた: 「承知しました。30万円、納期1月末で進めます。」
このように、金額と業務内容、納期が明記されていれば、立派な契約の証拠になります。
証拠として弱いやり取り
一方で、「よろしくお願いします」だけ、金額の明記がない、口頭での合意を前提にした曖昧な表現などは、証拠として弱いです。できるだけ具体的な内容を文字で残すようにしましょう。
メール・チャットの保存方法
証拠として保存する方法は、PDFに保存(印刷→PDF)、スクリーンショット(日付が表示されるように)、メールの印刷などがあります。LINEやSlackのやり取りも、スクリーンショットで保存しておきましょう。後から「言った・言わない」で揉めないための保険です。
見積書・請求書の重要性
見積書は、金額と業務内容を明記した書面です。業務内容、金額(税込・税抜)、納期、支払期日などの必須項目を記載しましょう。
請求書は、業務完了後に送付します。業務内容、金額、支払期日、振込先などを明記し、クライアントが受け取った証拠を残す(メール送信履歴、配達証明など)ことが大切です。
納品物の証拠
納品物の証拠も残しましょう。納品日時のメール、クライアントの「受領しました」というメール、納品物のスクリーンショットなどです。納品したという事実を証明できれば、支払い拒否を防げます。
フリーランスのための未払い予防策
予防策1: 簡易契約書を作成する
契約書は難しくありません。Wordで作れる簡単な契約書で十分です。業務内容、金額、支払期日、納品期限、検収基準、修正回数の上限などの必須項目を記載すれば、立派な契約書になります。
メールでの合意も有効
契約書を作れない場合でも、メールで合意した内容は有効です。以下のような形で確認メールを送りましょう。
例:
件名: 業務委託の確認
〇〇様
お世話になっております。
以下の内容で業務を進めさせていただきます。
業務内容: LP制作
金額: 30万円(税込)
納期: 2025年1月31日
支払期日: 2025年2月28日
修正: 2回まで
ご確認いただき、問題なければ返信をお願いいたします。
このメールに相手が「承知しました」と返信すれば、契約成立です。
予防策2: 前払い・中間払いを導入
未払いリスクを減らすために、前払い・中間払いを提案しましょう。
着手金として50%を先払いしてもらい、納品時に残り50%を受け取る方式なら、未払いリスクを半減できます。
あるいは、企画提案時に30%、中間納品時に40%、最終納品時に30%というように段階的な支払いにする方法もあります。一度に全額をリスクにさらさないことが大切です。
予防策3: クラウドソーシングを活用
クラウドソーシングサイトを経由すれば、未払いリスクゼロです。ランサーズ、クラウドワークス、ココナラなどがおすすめです。
これらのサイトには「仮払い制度」があります。クライアントが先に報酬をサイトに預け、納品後にサイトから支払われる仕組みなので、クライアントが支払わないリスクがゼロになります。手数料はかかりますが、安心を買えると考えれば安いものです。
予防策4: 成果物の検収基準を明確にする
検収基準が曖昧だと、支払い拒否の口実にされます。修正は2回まで、検収期限は納品後7日、検収期限を過ぎたら検収完了とみなすといった基準を、契約書やメールに明記しましょう。無限の修正要求を防げます。
未払いが発生した場合の対処法(フリーランス向け)
ステップ1: 柔らかく確認(支払期日+3〜7日)
まずは、相手のミスの可能性を考えて柔らかく確認します。
例:
件名: 請求書のご確認
〇〇様
お世話になっております。
先日お送りした請求書について、ご確認いただけましたでしょうか?
お支払期日が〇月〇日でしたので、念のためご連絡いたしました。
お手数ですが、ご確認いただけますと幸いです。
ステップ2: 明確に催促(支払期日+10〜14日)
相手から返信がない場合、明確に催促します。
例:
件名: お支払いのお願い
〇〇様
お世話になっております。
〇月〇日が支払期日の請求書について、お支払いをお願いいたします。
お忙しいとは存じますが、〇月〇日までにお振込みいただけますようお願いいたします。
ステップ3: 内容証明郵便(支払期日+1ヶ月)
それでも無視される場合、内容証明郵便を送ります。
- 費用: 1,500円程度
- 少額でも内容証明は有効
- 法的手続きの前段階
ステップ4: 少額訴訟(60万円以下)
60万円以下の債権なら、少額訴訟を検討します。
- 弁護士不要
- 費用: 1〜3万円
- 自分でできる
少額債権(10万円以下)の回収方法
少額債権の場合、費用対効果を考える必要があります。
方法1: 自力で粘り強く催促
メール、電話、訪問などで、費用をかけずに回収を試みます。時間はかかりますが、最もコストがかからない方法です。
方法2: 支払督促
裁判所の手続きですが、費用は数千円です。相手が異議を出さなければ強制執行可能になります。
方法3: 少額訴訟
60万円以下なら少額訴訟が可能です。費用は1〜3万円で、1回の期日で判決が出ます。自分でも手続きできるので、弁護士費用はかかりません。
方法4: 諦める
費用対効果を考えて、諦めるという選択肢もあります。今後の取引を避け、教訓として次に活かすことが大切です。時間とエネルギーを無駄にするより、新しい仕事に集中した方が良い場合もあります。
クライアントが支払いを拒否する理由と対処法
理由1: 「成果物が気に入らない」
契約書や見積書で合意した内容を確認し、「〇〇という条件で合意しましたよね?」と事実を伝えましょう。修正回数を超えている場合は追加料金を請求する権利があります。
理由2: 「そんな金額で合意していない」
メールやチャットで合意した証拠を提示し、見積書や請求書を再送しましょう。証拠があれば、相手も言い逃れできません。
理由3: 「納品されていない」
納品メールのコピーを提示し、添付ファイルの送信記録を見せましょう。証拠さえあれば、この言い訳は通用しません。
理由4: 「会社の方針で支払えない」
これは単なる言い訳です。法的手続きを検討し、内容証明郵便で正式に請求しましょう。会社の方針は、支払い拒否の理由になりません。
フリーランス向けの便利ツール
ツール1: クラウドソーシング
ランサーズ、クラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトは、仮払い制度で未払いリスクゼロです。手数料はかかりますが、安心して仕事ができます。
ツール2: 契約書作成サービス
クラウドサイン、DocuSignなどを使えば、オンラインで契約書を作成・署名できます。紙の契約書を郵送する手間が省けます。
ツール3: 請求書作成ツール
Misoca、freee請求書、マネーフォワード請求書などを使えば、請求書の作成・送付・管理を一元化できます。プロフェッショナルな請求書を簡単に作れます。
ツール4: 入金管理ツール
freee、マネーフォワードなどの会計ツールを使えば、未払いを自動検知できます。請求書を送ったのに入金がない場合、アラートで知らせてくれます。
フリーランス協会・労働組合の活用
フリーランス協会
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会では、会員向けに以下のサポートを提供しています:
- 未払いトラブルの相談窓口
- 弁護士費用の補助(会員特典)
- 各種保険
フリーランス・トラブル110番
厚生労働省が設置する相談窓口です:
- 無料相談窓口
- 法的アドバイス
- 電話・メールで相談可能
よくある質問(FAQ)
Q1. 契約書がなくても訴訟できる?
A. できます。契約書がなくても、メール、チャット、見積書などの証拠があれば、訴訟で勝てる可能性があります。
Q2. LINEのやり取りは証拠になる?
A. なります。LINEのやり取りも、契約の証拠として有効です。
ただし、スクリーンショットで保存しておく必要があります。
Q3. クライアントが個人の場合は?
A. クライアントが個人でも、未払い金を請求できます。
手続きは法人と同じですが、相手の住所が必要です。
まとめ
フリーランスの未払い予防チェックリスト
- 契約書または合意メールを作成
- 前払い・中間払いを提案
- 検収基準を明確にする(修正回数、検収期限)
- 納品の証拠を保存
- メール・チャットのやり取りを保存
- クラウドソーシングの活用を検討
簡易契約書のテンプレート(メール版)
件名: 業務委託契約の確認
〇〇様
お世話になっております。
以下の内容で業務を進めさせていただきます。
【業務内容】
- LP制作(TOPページのみ)
【金額】
- 30万円(税込)
【納期】
- 2025年1月31日
【支払期日】
- 2025年2月28日
- 振込先: 〇〇銀行 〇〇支店 普通 1234567
【修正】
- 2回まで無料
- 3回目以降は追加料金(1回あたり3万円)
【検収】
- 納品後7日以内に検収
- 期限を過ぎた場合は検収完了とみなします
ご確認いただき、問題なければ返信をお願いいたします。
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次のステップ
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の状況に応じて、弁護士などの専門家にご相談ください。
最終更新: 2025年11月18日
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