相手が倒産・破産した場合の債権回収|優先順位と回収可能性
この記事は誰のため?
取引先が倒産・破産してしまった、未払い金を回収できるか知りたい、破産管財人への債権届出の方法がわからない、倒産の兆候を見逃さないようにしたい。そんな不安を抱えている方に向けて、この記事を書きました。
この記事を読むことで、倒産・破産時の対処法と、少しでも回収額を増やす方法がわかります。
倒産・破産の種類
倒産とは
倒産とは、会社が債務を支払えなくなった状態の総称です。
法的整理と私的整理があります。
法的整理の種類
1. 破産
会社を清算する手続きです。
- 財産を全て売却して債権者に分配
- 会社は消滅
- 回収可能性: 極めて低い(0〜10%)
2. 民事再生
会社を再建する手続きです。
- 一部債務をカットして事業継続
- 会社は存続
- 回収可能性: 低〜中(30〜70%)
3. 会社更生
大企業向けの再建手続きです。
- 裁判所が関与して再建
- 株主の権利も制限
- 回収可能性: 低〜中
私的整理
裁判所を通さず、債権者と交渉する方法です。
- 銀行が主導することが多い
- 会社は存続
- 回収可能性: ケースバイケース
倒産・破産を察知する兆候
取引先の経営が危うくなると、いくつかの兆候が現れます。早めに気づくことができれば、被害を最小限に抑えられる可能性があります。

危険な兆候10選
まず注意すべきは、支払いが連続で遅れることです。「今月だけ待ってほしい」が続くようなら、資金繰りが悪化しているサインかもしれません。
また、担当者と連絡が取れなくなるのも危険信号です。メールや電話に返信がない、電話が不通になる、固定電話が使えなくなるといった状況は要注意です。
さらに、オフィスが縮小・移転したり、従業員が大量に退職したり(SNSで退職報告が相次ぐなど)、経営者が急に変わるといった変化も、経営難の兆候と考えられます。
ネット上で「支払いが遅れている」という口コミが増える、銀行が取引を停止する(融資が止まる、口座が凍結)、手形が不渡りになる(2回不渡りを出すと銀行取引停止)といった情報も、倒産が近いことを示しています。
そして何より、取引先から「支払いを待ってほしい」と頻繁に依頼されるようになったら、資金繰りが悪化している証拠です。こうした兆候を見逃さないようにしましょう。
倒産・破産が発覚したらすぐにやるべきこと
ステップ1: 取引を即座に停止
倒産が発覚したら、これ以上債権を増やさないことが最優先です。新規発注を受けない、納品予定の商品を止める、サービスの提供を停止するなど、即座に取引をストップしましょう。
ステップ2: 債権額を確定
未払い金額の総額を計算します。請求書、契約書、納品書、取引履歴などを確認して、正確な債権額を把握しましょう。

ステップ3: 相殺できる債務を確認
こちらが相手に払うべき債務があれば相殺できます。
例:
- 債権(未払い): 100万円
- 債務(相手からの仕入れ代金): 30万円
- 相殺後の債権: 70万円
ただし、相殺は破産手続き開始前に行う必要があります。タイミングを逃さないようにしましょう。
ステップ4: 担保・保証人の確認
契約書を確認し、連帯保証人(経営者個人など)、抵当権などの担保、所有権留保条項(商品の所有権を留保)があるかチェックします。これらがあれば、回収の可能性が高まります。
ステップ5: 弁護士に相談
倒産・破産手続きは複雑なため、弁護士に相談することを推奨します。専門家のアドバイスを受けることで、最善の対応ができます。
破産手続きの流れ
ステップ1: 破産申立て
会社(または債権者)が裁判所に破産を申し立てます。
ステップ2: 破産手続開始決定
裁判所が破産を認め、破産管財人が選任されます。
破産管財人の役割:
- 会社の財産を管理
- 債権者への配当
- 財産の換価(売却)
ステップ3: 債権届出期間
債権者は、破産管財人に債権を届け出る必要があります。
- 期間: 通常1〜2ヶ月
- 期限を過ぎると配当を受けられない
ステップ4: 債権調査
破産管財人が、債権の有無・額を確認します。
ステップ5: 財産の換価
会社の財産を売却して現金化します。
ステップ6: 配当
債権者に優先順位に従って分配します。
- 配当率: 通常0〜10%
- 多くの場合、一般債権者はほとんど回収できない
ステップ7: 破産手続終結
配当が終わったら、破産手続きが終了します。
債権届出の方法
必要書類
- 債権届出書(破産管財人から送られてくる書式)
- 請求書のコピー
- 契約書のコピー
- 取引履歴
債権届出書の書き方
破産管財人から送られてくる書式に記入します。
記載事項:
- 債権額
- 債権の発生原因(売掛金、貸付金など)
- 担保の有無
- 優先債権かどうか
提出方法
- 破産管財人に郵送または持参
- 期限厳守(遅れると配当を受けられない)
債権の優先順位
破産手続きでは、債権に優先順位があります。
1. 財団債権(最優先)
破産手続きの費用などが最優先されます。
- 破産管財人の報酬
- 税金、社会保険料
- 従業員の給料(一部)
2. 優先的破産債権
次に優先されるのは:
- 従業員の給料(残り)
- 退職金
3. 一般破産債権
通常の取引債権(あなたの債権)はここに含まれます。
- 銀行の貸付金
- 取引先への未払い金
4. 劣後的破産債権
最後に支払われる債権:
- 罰金、過料
- 劣後的な債権
一般破産債権は、財団債権と優先的破産債権で財産が尽きると、配当がほとんどありません。
配当の見込み
配当率の実態
破産手続きにおける配当率は、非常に低いのが現実です。
- 破産の場合: 0〜10%(ほとんど回収できない)
- 民事再生の場合: 30〜70%
配当ゼロのケース
以下の場合、配当がゼロになることもあります:
- 財産が全くない(既に売却済み)
- 財団債権・優先的破産債権で全て消える
- 破産管財人の費用すら賄えない
少しでも回収を増やす方法
方法1: 相殺
破産手続き開始前に相殺すれば、100%回収できます。相手に対する債務があり、双方の債権が弁済期にあれば、相殺が可能です。これは最も確実な回収方法の一つです。
方法2: 担保権の実行
抵当権や質権などの担保があれば、優先的に回収できます。担保権を持つ債権者は、一般債権者より有利な立場にあります。契約時に担保を取っておくことの重要性がわかります。
方法3: 連帯保証人への請求
経営者個人が連帯保証人になっている場合、破産とは別に請求可能です。会社が破産しても、連帯保証人の責任は消えません。個人に請求できるので、回収の可能性が残ります。
方法4: 動産の引き上げ
所有権留保条項がある場合、納品した商品を引き上げられます。所有権留保条項とは、代金完済まで商品の所有権を売主が留保する条項のことです。破産前に商品を回収できるので、損失を抑えられます。
民事再生の場合の対応
民事再生とは
会社を再建する手続きです。破産と違い、会社は存続します。
債権者としての対応
民事再生では、再生計画案に賛成するか反対するかを決めます。
- 賛成多数なら再生計画が可決
- 再生計画に従って分割払いで回収
回収可能性
- 再生計画に従って分割払いで回収
- カット率: 30〜70%(ケースバイケース)
破産よりは回収可能性が高いですが、全額回収は難しいです。
倒産前に気づいたら
倒産の兆候に気づいたら、すぐに対策を取りましょう。
担保を取る
連帯保証人を立ててもらう、商品の所有権留保条項を契約書に入れるなど、担保を確保することが大切です。これにより、万が一の時に回収の可能性が高まります。
前払い・中間払いに変更
後払いをやめて、着手金として50%を先払いしてもらう、少しずつ回収するなど、支払い条件を変更しましょう。未払いリスクを減らせます。
取引限度額を下げる
与信限度額を引き下げ、大きな取引を避けることも重要です。危険な兆候が見えたら、被害を最小限に抑える行動を取りましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 破産したら債権は全く回収できない?
A. **一般破産債権の場合、配当率は0〜10%**です。ほとんど回収できないと考えた方が良いでしょう。
ただし、以下の場合は回収可能性があります:
- 連帯保証人がいる
- 担保権を持っている
- 相殺できる債務がある
Q2. 民事再生と破産の違いは?
A. 民事再生は会社を再建、破産は会社を清算です。
| 民事再生 | 破産 | |
|---|---|---|
| 会社 | 存続 | 消滅 |
| 回収可能性 | 30〜70% | 0〜10% |
| 期間 | 数年 | 数ヶ月〜1年 |
Q3. 連帯保証人に請求できる?
A. できます。連帯保証人は、会社が破産しても責任を負います。
ただし、連帯保証人個人も破産する可能性があります。
まとめ
倒産・破産時の対応チェックリスト
- 取引を即座に停止
- 債権額を確定
- 相殺できる債務を確認(破産前に実行)
- 担保・保証人の確認
- 破産管財人に債権届出(期限厳守)
- 連帯保証人に請求(いる場合)
- 弁護士に相談
配当の現実
| 債権の種類 | 配当の可能性 |
|---|---|
| 財団債権 | 100% |
| 優先的破産債権 | 高い |
| 一般破産債権 | 0〜10% |
| 劣後的破産債権 | ほぼゼロ |
一般破産債権(通常の取引債権)は、ほとんど回収できないのが現実です。倒産前の予防策が何より重要です。
次のステップ
倒産リスクの予防について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の状況に応じて、弁護士などの専門家にご相談ください。
最終更新: 2025年11月18日
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