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強制執行の手続き|判決を取った後の債権回収方法

✍️編集部

この記事は誰のため?

この記事は、以下のような状況でお困りの方に向けて書かれています:

  • 判決を取ったが、相手が任意に支払わない
  • 強制執行の具体的な手続きを知りたい
  • どの財産を差し押さえるべきかわからない

この記事を読むことで、強制執行の具体的な手続きと成功率を上げる方法がわかり、確実に債権を回収できます。


強制執行とは何か

強制執行は、民事執行法に基づく法的手続きで、裁判所の力を借りて、相手の財産を強制的に差し押さえる制度です。

法的根拠

強制執行は、民事執行法(昭和54年法律第4号)に規定されています。債務名義(判決、支払督促など)を持っている債権者が、債務者の財産を差し押さえ、強制的に債権を回収できます。


強制執行の前提条件

強制執行を行うには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

条件1: 債務名義がある

債務名義とは、強制執行の根拠となる公的な文書です。

確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、和解調書、公正証書(執行認諾約款付き)などが債務名義になります。

条件2: 債務名義が確定している

判決の場合、相手が控訴せずに確定している必要があります。確定には、判決から2週間経過後という期間があります。

条件3: 相手の財産の所在がわかっている

強制執行は、どの財産を差し押さえるかを特定する必要があります。

相手の財産がわからない場合、強制執行はできません。これが強制執行の最大の難関です。


差押え対象の種類

強制執行で差し押さえられる財産は、大きく4種類に分かれます。

1. 給料(債権執行)

相手が会社員の場合、給料を差し押さえることができます。

差押え可能額は、手取り給料の1/4までです。ただし、手取り33万円を超える部分は全額差押え可能です。

例えば手取り給料40万円の場合、33万円までの1/4が8.25万円、33万円を超える部分が7万円なので、合計差押え可能額は15.25万円となります。

メリットは、毎月継続的に回収でき、完済まで差押えが続く点です。デメリットは、勤務先を知る必要があることと、相手が退職すると差押えが終了することです。

2. 銀行預金(債権執行)

相手の銀行口座を差し押さえます。差押え範囲は口座残高の全額です。

メリットは、一括で回収でき、手続きが比較的簡単な点です。デメリットは、口座の銀行・支店を特定する必要があることと、残高がなければ回収できないことです。

3. 不動産(不動産執行)

相手が不動産を所有している場合、競売にかけて回収します。対象は土地、建物、マンションです。

メリットは、高額回収の可能性があることと、登記簿で所有がわかることです。デメリットは、時間がかかる(半年から1年以上)、費用が高い(予納金が数十万円)、抵当権がある場合回収できない可能性があることです。

4. 動産(動産執行)

相手の家財道具、車などを差し押さえます。対象は家具、家電、車、貴金属です。

メリットは、執行官が現地訪問して差し押さえることと、目に見える効果があることです。デメリットは、換価価値が低い(ほとんど値段がつかない)、生活必需品は差押え不可なことです。動産執行は最終手段と考えましょう。


おすすめの差押え対象(優先順位)

優先順位1: 銀行預金

最も効率的で、成功率が高い方法です。

一括で回収でき、手続きが比較的簡単で、費用が安いのが理由です。必要な情報は、銀行名、支店名、口座種類(普通/当座)です。

優先順位2: 給料

継続的に回収できる方法です。

毎月確実に回収でき、相手が会社員なら有効です。必要な情報は、勤務先の会社名と会社の所在地です。

優先順位3: 不動産

高額案件の場合に有効です。

高額回収の可能性があり、登記簿で所有がわかります。ただし、時間と費用がかかり、抵当権があると優先順位が下がる点に注意が必要です。

優先順位4: 動産

最終手段です。換価価値が低く、費用倒れの可能性があります。

差押え対象の優先順位フローチャート


強制執行の流れ(銀行預金の場合)

最も一般的な銀行預金の差押えの流れを解説します。

ステップ1: 債務名義の取得

判決、支払督促などの債務名義を取得します。

ステップ2: 執行文の付与

執行文とは、「この債務名義に基づいて強制執行できる」という証明書です。

申請先は判決を出した裁判所の書記官です。必要書類は債務名義(判決正本など)と申請書で、手数料は300円です。

ステップ3: 送達証明書の取得

判決が相手に送達されたことの証明書です。申請先は判決を出した裁判所の書記官で、手数料は150円です。

ステップ4: 差押え申立書の作成

債権差押命令申立書を作成します。記載内容は、債権者(あなた)の情報、債務者(相手)の情報、第三債務者(銀行)の情報、請求債権額です。

ステップ5: 簡易裁判所に申立て

管轄裁判所は、相手の住所地を管轄する簡易裁判所です。

提出書類は、債権差押命令申立書、債務名義(判決正本など)、執行文、送達証明書、相手の戸籍謄本(住所確認用)です。手数料は収入印紙4,000円と郵便切手約3,000円です。

ステップ6: 差押命令の発付

申立てから約1〜2週間で、裁判所から差押命令が発付されます。差押命令は、銀行と相手に送達されます。

ステップ7: 取立て

差押命令が第三債務者(銀行)に送達されてから1週間後に、銀行から直接回収できます。

銀行に連絡し、「債権差押命令に基づき取立てをしたい」と伝えます。銀行が口座残高を振り込んでくれます。


強制執行に必要な書類

必須書類

債務名義(判決正本など)、執行文、送達証明書、差押え申立書、相手の戸籍謄本(住所確認用)、第三債務者の情報(銀行の場合: 銀行名、支店名、口座種類)が必要です。

取得方法

債務名義は判決を出した裁判所から取得、執行文は裁判所書記官に申請、送達証明書は裁判所書記官に申請、戸籍謄本は市区町村役場で取得します。


相手の財産を調べる方法

強制執行の最大の難関は、相手の財産を特定することです。

銀行口座の調べ方

方法1: 過去の振込明細から推測

過去に相手に振り込んだことがあれば、その銀行が候補です。

方法2: 取引履歴から銀行を特定

相手からの振込があれば、振込元の銀行がわかります。

方法3: 弁護士会照会(弁護士に依頼)

弁護士に依頼すると、弁護士会照会により銀行に問い合わせできます。費用は弁護士費用として10万円からです。

勤務先の調べ方

方法1: 契約書、名刺、SNSから推測

契約時の名刺や、LinkedInなどのSNSで勤務先がわかることがあります。

方法2: 探偵に依頼

探偵に依頼して、相手の勤務先を調査してもらいます。費用は10万円から30万円です。

不動産の調べ方

方法1: 登記簿謄本を取得

相手の住所地で登記簿謄本を取得すると、不動産の所有がわかります。取得先は法務局で、費用は1通600円です。

方法2: 固定資産税の課税台帳

市区町村役場で固定資産税の課税台帳を閲覧できます(債権者は閲覧可能)。


費用

債権執行(銀行預金・給料)の場合

手数料(収入印紙)が4,000円、郵便切手が約3,000円、執行文の付与が300円、送達証明書が150円で、合計約7,500円です。

不動産執行の場合

手数料が数万円、予納金が数十万円から(競売の費用)で、合計数十万円からかかります。


強制執行の成功率を上げるコツ

コツ1: 相手の財産を正確に特定する

銀行の支店まで特定することが重要です。銀行名だけでは差押えできません。支店名まで特定しましょう。

コツ2: 複数の財産を同時に差し押さえる

複数の銀行口座を同時に差し押さえることで、回収率が上がります。

コツ3: 早めに申立てる

相手が財産を隠す前に、早めに強制執行を申し立てましょう。


強制執行ができない・失敗するケース

ケース1: 相手に財産がない

預金残高がゼロ、無職で給料がない場合、強制執行しても回収できません。

ケース2: 財産の所在がわからない

銀行がわからない、勤務先不明の場合、差押えできません。

ケース3: 相手が夜逃げ・所在不明

住所がわからない場合、強制執行の申立てができません。

対処法

財産調査を徹底する、弁護士に依頼して弁護士会照会を利用する、探偵に依頼して勤務先を調査するといった方法があります。


弁護士に依頼すべきタイミング

自分でできるケース

相手の財産(銀行口座や勤務先)がはっきりしている、手続きに時間をかけられる、債権額が少額(50万円以下)の場合は自分でできます。

弁護士に依頼すべきケース

相手の財産が不明(弁護士会照会が必要)、手続きが複雑(不動産執行など)、高額案件(100万円以上)の場合は弁護士への依頼を検討しましょう。

費用

着手金が10〜30万円、成功報酬が回収額の10〜20%です。

例えば債権額100万円を全額回収した場合、着手金20万円、成功報酬が100万円×15%=15万円で、合計弁護士費用35万円、手取りは65万円となります。


よくある質問(FAQ)

Q: 強制執行は必ず成功する?

A: 必ず成功するわけではありません

相手に財産がない場合、強制執行しても回収できません。

Q: 差し押さえた後、相手との関係は?

A: 強制執行を行うと、関係は完全に決裂します。

今後の取引を考えるなら、強制執行の前に和解を検討しましょう。

Q: 費用倒れにならない?

A: 債権額が少額(10万円以下)の場合、費用倒れになる可能性があります。

判断基準として、債権額30万円以上なら検討の価値あり、債権額10万円以下なら諦めるか、費用対効果を慎重に判断しましょう。

Q: 相手が「お金がない」と言っている場合は?

A: 「お金がない」と言っていても、実際には財産があるケースもあります。

登記簿や銀行口座を調査して、本当に財産がないか確認しましょう。


まとめ

強制執行は、判決を取った後の最終手段です。

チェックリスト

申立て前に以下を確認しましょう。

債務名義(判決、支払督促など)がある、債務名義が確定している、相手の財産(銀行口座、勤務先など)がわかっている、執行文を取得した、送達証明書を取得した、差押え申立書を作成した、収入印紙と郵便切手を準備した。

手続きの流れ(まとめ)

  1. 債務名義の取得
  2. 執行文の付与
  3. 送達証明書の取得
  4. 差押え申立書の作成
  5. 簡易裁判所に申立て
  6. 差押命令の発付(1〜2週間)
  7. 第三債務者(銀行)に送達
  8. 1週間後に取立て

おすすめの差押え対象

  1. 銀行預金(最も効率的)
  2. 給料(継続的に回収)
  3. 不動産(高額案件の場合)
  4. 動産(最終手段)

強制執行は、相手の財産を正確に特定することが成功のカギです。銀行口座や勤務先がわかっている場合、自分で手続きできます。財産が不明な場合は、弁護士に依頼して弁護士会照会を利用しましょう。


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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言を構成するものではありません。具体的な法的問題については、弁護士等の専門家にご相談ください。

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