契約書に入れるべき支払い条項チェックリスト|未払いを防ぐ記載事項【テンプレート付き】
この記事は誰のため?
この記事は、以下のような状況の方に向けて書かれています:
- 契約書を作るとき、支払いに関してどんな条項を入れるべきか分からない
- 未払いトラブルを事前に防ぐために、契約書で工夫したい
- 遅延損害金や期限の利益喪失条項とは何か知りたい
- 法的に有効な契約書の支払い条項を理解したい
この記事を読むことで、契約書に入れるべき支払い条項、未払いリスクを減らす記載事項、テンプレートが分かります。
契約書に支払い条項を入れる理由
なぜ重要なのか?
契約書に支払い条項を明記することで、様々なトラブルを未然に防ぐことができます。
まず、支払期日の認識違いを防げます。「いつまでに払うか」が曖昧だと、後々トラブルの原因となります。
また、遅延損害金の請求根拠を明確にできます。契約書に記載がないと、後から請求することが困難になります。
さらに、法的手続きをスムーズに進められます。管轄裁判所が決まっていないと、訴訟の際に不利な立場に立たされることがあります。
最後に、「そんな約束はしていない」という主張を防げます。書面で残しておかないと、証拠がなく水掛け論になってしまいます。
契約書に入れるべき支払い条項(8項目)
1. 支払期日
記載すべき内容
支払期日の条項では、いつまでに支払うかを明確に記載する必要があります。また、支払方法(振込、現金など)も明記しておくことが重要です。
記載例
第○条(支払期日)
乙は、甲に対し、本契約に基づく対価として金○○円を、
2025年12月31日までに、甲が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。
振込手数料は乙の負担とする。
ポイント
- ✅ 具体的な日付を記載(「速やかに」は不可)
- ✅ 支払方法を明記(振込、現金、手形など)
- ✅ 振込手数料の負担者を明記
2. 遅延損害金
記載すべき内容
遅延損害金の条項では、支払いが遅れた場合の利率を明確にします。具体的には、年何パーセントの遅延損害金を請求するかを記載する必要があります。
記載例
第○条(遅延損害金)
乙が前条に定める支払期日までに支払いを行わない場合、
甲は乙に対し、支払期日の翌日から支払済みまで、
未払金額に対して年14.6%の割合による遅延損害金を請求することができる。
ポイント
- ✅ 利率を明記(一般的には年6〜14.6%)
- ✅ 「支払期日の翌日から」と起算日を明記
- ✅ 法定利率(年3%)より高い利率を設定する場合は、契約書に明記が必須
遅延損害金の相場
| 取引の種類 | 利率 |
|---|---|
| 商取引(一般) | 年6〜10% |
| 貸金業 | 年14.6%(上限) |
| 法定利率 | 年3%(2020年4月以降) |
3. 期限の利益喪失条項
記載すべき内容
期限の利益喪失条項では、相手が一定の状態になった場合に、期限を待たずにすぐ全額を請求できる権利を定めます。これは債権保全のために非常に重要な条項です。
記載例
第○条(期限の利益の喪失)
乙が次の各号のいずれかに該当した場合、甲からの通知なくして、
乙は本契約に基づく一切の債務につき、当然に期限の利益を失い、
直ちに債務全額を支払わなければならない。
(1) 支払期日に支払いを怠ったとき
(2) 分割払いの約束に基づく支払いを1回でも怠ったとき
(3) 差押え、仮差押え、仮処分、強制執行を受けたとき
(4) 破産手続開始、民事再生手続開始の申立てがあったとき
(5) 手形または小切手が不渡りとなったとき
(6) その他、本契約の条項に違反したとき
ポイント
- ✅ 分割払いの場合、1回でも遅れたら全額請求できる
- ✅ 相手が破産・倒産した場合、すぐに全額請求できる
4. 分割払いの条件(該当する場合)
記載すべき内容
分割払いを認める場合は、分割払いの回数、各回の金額、そして各回の期日を明確に記載する必要があります。曖昧さを残すとトラブルの原因となります。
記載例
第○条(分割払い)
乙は、甲に対し、本契約に基づく対価として金100万円を、
以下の通り分割して支払う。
第1回:2025年12月31日 金25万円
第2回:2026年1月31日 金25万円
第3回:2026年2月28日 金25万円
第4回:2026年3月31日 金25万円
乙が分割払いを1回でも怠った場合、乙は当然に期限の利益を失い、
直ちに残債務全額を支払わなければならない。
ポイント
- ✅ 各回の支払期日と金額を明記
- ✅ 1回でも遅れたら全額請求できる条項を入れる
5. 管轄裁判所
記載すべき内容
管轄裁判所の条項では、紛争が起きた場合にどこの裁判所で争うかを予め定めておきます。これにより、訴訟になった際の手続きがスムーズになります。
記載例
第○条(管轄裁判所)
本契約に関する紛争については、甲の本店所在地を管轄する
裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
ポイント
- ✅ あなた(甲)の住所地の裁判所を管轄にする
- ✅ 「専属的合意管轄」と明記すると、他の裁判所では争えない
なぜ重要か?
- 相手が遠方に住んでいる場合、相手の住所地の裁判所で争うと、交通費・時間がかかる
- 自分の住所地の裁判所を管轄にすることで、訴訟のコストを下げられる
6. 契約解除条項
記載すべき内容
契約解除条項では、相手が支払わない場合や契約に違反した場合に、契約を解除できる権利を定めます。これにより、問題のある取引関係を終了させることができます。
記載例
第○条(契約の解除)
甲は、乙が次の各号のいずれかに該当した場合、
何らの催告なくして、本契約を解除することができる。
(1) 支払期日に支払いを怠り、催告後も相当期間内に支払わなかったとき
(2) 本契約の条項に違反し、催告後も相当期間内に是正しなかったとき
(3) 破産手続開始、民事再生手続開始の申立てがあったとき
甲が本契約を解除した場合でも、甲は乙に対し、
既に発生した債権を請求することができる。
ポイント
- ✅ 支払いが遅れた場合、契約を解除できる
- ✅ 契約解除後も、既に発生した債権(未払金)は請求できる
7. 損害賠償条項
記載すべき内容
損害賠償条項では、相手が契約に違反したことで損害が生じた場合に、その賠償を請求できる権利を定めます。弁護士費用や訴訟費用も含められることを明記することが重要です。
記載例
第○条(損害賠償)
乙が本契約に違反したことにより甲に損害が生じた場合、
乙は甲に対し、その損害を賠償する責任を負う。
前項の損害賠償額には、弁護士費用、訴訟費用、
債権回収に要した費用を含むものとする。
ポイント
- ✅ 弁護士費用、訴訟費用も請求できることを明記
- ✅ 「損害を賠償する責任を負う」と明記
8. 分割払い時の担保・連帯保証人(該当する場合)
記載すべき内容
分割払いを認める場合は、債権保全のために連帯保証人を立ててもらう、または担保を設定することが推奨されます。これにより、支払いが滞った際の回収可能性が高まります。
記載例
第○条(連帯保証人)
乙は、本契約に基づく債務の履行を担保するため、
連帯保証人を立てなければならない。
連帯保証人は、乙と連帯して、本契約に基づく一切の債務を負担する。
ポイント
- ✅ 分割払いの場合、連帯保証人を立てることで回収率が上がる
- ✅ 連帯保証人には、保証契約書も別途作成する
支払い条項のチェックリスト
契約書を作成する際、以下の項目をチェックしてください:
必須項目
- 支払期日が具体的な日付で記載されている
- 支払方法(振込、現金など)が明記されている
- 振込手数料の負担者が明記されている
- 遅延損害金の利率が明記されている
- 管轄裁判所が記載されている
推奨項目
- 期限の利益喪失条項が記載されている
- 契約解除条項が記載されている
- 損害賠償条項が記載されている
- 分割払いの場合、各回の期日・金額が明記されている
- 分割払いの場合、連帯保証人を立てる条項がある
契約書テンプレート(支払い条項部分)
以下は、業務委託契約書における支払い条項のテンプレートです。
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業務委託契約書(抜粋:支払条項部分)
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第5条(報酬および支払期日)
1. 甲は、乙に対し、本契約に基づく業務の対価として、
金○○円(税込)を支払う。
2. 甲は、前項の報酬を、乙が業務を完了し、成果物を納品した日から
30日以内に、乙が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。
3. 振込手数料は甲の負担とする。
第6条(遅延損害金)
甲が前条に定める支払期日までに支払いを行わない場合、
乙は甲に対し、支払期日の翌日から支払済みまで、
未払金額に対して年14.6%の割合による遅延損害金を請求することができる。
第7条(期限の利益の喪失)
甲が次の各号のいずれかに該当した場合、乙からの通知なくして、
甲は本契約に基づく一切の債務につき、当然に期限の利益を失い、
直ちに債務全額を支払わなければならない。
(1) 支払期日に支払いを怠ったとき
(2) 差押え、仮差押え、仮処分、強制執行を受けたとき
(3) 破産手続開始、民事再生手続開始の申立てがあったとき
(4) その他、本契約の条項に違反したとき
第8条(契約の解除)
1. 乙は、甲が次の各号のいずれかに該当した場合、
何らの催告なくして、本契約を解除することができる。
(1) 支払期日に支払いを怠り、催告後も相当期間内に支払わなかったとき
(2) 本契約の条項に違反し、催告後も相当期間内に是正しなかったとき
(3) 破産手続開始、民事再生手続開始の申立てがあったとき
2. 乙が本契約を解除した場合でも、乙は甲に対し、
既に発生した債権を請求することができる。
第9条(損害賠償)
1. 甲が本契約に違反したことにより乙に損害が生じた場合、
甲は乙に対し、その損害を賠償する責任を負う。
2. 前項の損害賠償額には、弁護士費用、訴訟費用、
債権回収に要した費用を含むものとする。
第10条(管轄裁判所)
本契約に関する紛争については、乙の本店所在地を管轄する
裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
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契約書作成時の注意点
1. 双方が署名・押印する
紙の契約書の場合
- 双方が署名・押印する
- 契約書を2部作成し、各自が1部ずつ保管
電子契約の場合
- 電子署名を使用
- タイムスタンプを付与して、改ざん防止
2. 契約書は必ず保管する
保管期間
- 法人:7年間
- 個人事業主:5年間(青色申告は7年)
3. 口頭での約束だけはNG
書面で残す理由
- 「そんな約束はしていない」と言われるのを防ぐ
- 裁判になった場合、証拠として使える
4. 相手が契約書に署名しない場合
代替手段
- メールで契約内容を送り、相手に「了解しました」と返信してもらう
- 請求書に支払条件を明記し、相手に送付する
よくある質問(FAQ)
Q1: 契約書に印鑑は必要?
A: 法的には不要ですが、慣習として押すのが一般的です。
- 法人の場合:代表者印(実印)を押すのが一般的
- 個人事業主の場合:認印でもOK
- 電子契約の場合:電子署名で代替可能
Q2: 遅延損害金の利率は何%が適切?
A: 年6〜14.6%が一般的です。
- 商取引:年6〜10%
- 貸金業:年14.6%(上限)
- 法定利率:年3%
利率が高すぎると無効になる場合があるため、年14.6%以下に設定することを推奨
Q3: 管轄裁判所を相手の住所地にすると不利?
A: はい、不利になります。
- 相手の住所地の裁判所で争うと、交通費・時間がかかる
- できるだけ、自分の住所地の裁判所を管轄にすることを推奨
Q4: 相手が契約書の内容に同意しない場合は?
A: 交渉して、双方が納得できる内容に修正します。
- 遅延損害金の利率を下げる
- 支払期日を延ばす
- 管轄裁判所を中間地点にする
Q5: 契約書がない場合、未払いは請求できない?
A: 請求できます。
- メール、LINE、請求書などの記録があれば、証拠として使える
- ただし、契約書があった方が証拠として強い
契約書と請求書の連携
契約書で決めた内容を請求書に反映
契約書で決めた内容
- 支払期日
- 遅延損害金の利率
- 振込手数料の負担者
これらを請求書にも明記することで、トラブルを防げます
→ 請求書の書き方
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必須項目 | 支払期日、支払方法、振込手数料負担者、遅延損害金、管轄裁判所 |
| 推奨項目 | 期限の利益喪失、契約解除、損害賠償、連帯保証人 |
| 遅延損害金 | 年6〜14.6%が一般的 |
| 管轄裁判所 | 自分の住所地の裁判所を指定 |
| 保管期間 | 法人7年、個人事業主5年(青色申告は7年) |
契約書に支払い条項をしっかり記載することで、未払いトラブルのリスクを大幅に減らせます。
免責事項
重要な注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。
- 個別の状況に応じて、弁護士や行政書士などの専門家にご相談ください。
- 本記事のテンプレートをそのまま使用した結果生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いません。
- 契約書の内容は、取引の内容や相手との関係性によって異なります。
最終更新: 2025年11月12日
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