前払い・着手金制度の導入方法|取引先が納得する理由の伝え方【契約書の記載例付き】
この記事は誰のため?
- 未払いリスクを減らしたい
- キャッシュフローを改善したい
- 前払い制度を導入したいが、伝え方が分からない
- 取引先に納得してもらえる理由を知りたい
この記事を読むことで、前払い制度の導入方法、相手への伝え方、契約書の記載例が分かります。
前払い・着手金制度とは?
簡単に言うと
商品・サービス提供前に、代金の一部または全額を受け取る制度
- 前払い: 全額を事前に受け取る
- 着手金: 一部を事前に受け取る(例: 50%前払い、50%納品後)
メリット
前払い・着手金制度には、大きく3つのメリットがあります。
まず、全額前払いの場合は未払いリスクがゼロになります。納品前にお金を受け取るため、後から支払いを拒否されるリスクがなくなります。
次に、キャッシュフローが大幅に改善します。事前に入金があることで運転資金が楽になり、仕入れ代金や外注費に充てることができます。
さらに、相手の本気度を確認できるという副次的なメリットもあります。前払いを受け入れるということは、本気で依頼しているという証拠です。逆に、前払いを拒否する場合は、本気度が低いか、または資金がない可能性があります。
前払い制度の相場
業界別の相場
| 業界 | 前払い割合 | 備考 |
|---|---|---|
| Web制作 | 30〜50% | 着手金として受け取ることが多い |
| システム開発 | 30〜50% | 大規模案件は分割払い(着手時、中間、納品後) |
| コンサルティング | 50〜100% | 月額制の場合は前払いが一般的 |
| 建築・リフォーム | 30〜50% | 材料費を賄うため |
| デザイン | 30〜50% | 着手金として |
| イベント企画 | 50〜100% | キャンセルリスクが高いため |
| EC・物販 | 100% | クレジットカード決済、代金引換 |
一般的なパターン
パターン1: 全額前払い
- EC・物販
- サブスクリプション(月額制)
- リスクが高い案件
パターン2: 50%前払い、50%納品後
- Web制作、システム開発
- デザイン、コンサルティング
パターン3: 3分割(着手時・中間・納品後)
- 大規模案件(100万円以上)
- 期間が長い案件(3ヶ月以上)
前払い制度を導入する理由の伝え方
1. 業界の慣習を理由にする
伝え方
弊社では、業界の慣習に従い、
着手金として〇〇%を前払いでお願いしております。
ポイント
「業界の慣習」という理由は、相手にとって納得しやすい説明です。実際に多くの業界で前払いは一般的な慣行となっているため、説得力があります。
2. 材料費・外注費を理由にする
伝え方
本件では、材料費・外注費が先行して発生するため、
着手金として〇〇%を前払いでお願いしております。
ポイント
実際に先行費用が発生する場合、この理由は相手にとって非常に理解しやすくなります。Web制作、建築、イベント企画など、先行投資が必要な業種で特に有効です。
3. リスク管理を理由にする
伝え方
初回取引のため、リスク管理の観点から、
着手金として〇〇%を前払いでお願いしております。
継続取引になりましたら、条件の見直しも可能です。
ポイント
新規取引先には、リスク管理を理由として提示できます。また、「継続取引になったら見直す」と伝えることで、相手も納得しやすくなり、長期的な関係構築への道も開けます。
4. 他社事例を理由にする
伝え方
弊社のお取引先様には、
皆様に着手金〇〇%を前払いでお願いしております。
ポイント
「他社も同じ条件で取引している」という事実は、相手が受け入れやすい理由のひとつです。自社だけが特別扱いされているわけではないと理解してもらえます。
前払いを依頼するタイミング
見積もり段階で伝える
NGパターン
- 契約後に「前払いでお願いします」と言う
- 相手が「聞いていない」と不満を持つ
OKパターン
- 見積書に「着手金〇〇%を前払い」と明記
- 契約前に説明
見積書への記載例
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
見積書
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項目: Webサイト制作
金額: 500,000円(税込)
【お支払い条件】
・着手金: 250,000円(50%)
※ご契約後、〇〇日以内にお振込みください。
・残金: 250,000円(50%)
※納品後、〇〇日以内にお振込みください。
契約書への記載例
パターン1: 全額前払い
第○条(報酬および支払期日)
1. 甲は、乙に対し、本契約に基づく業務の対価として、
金500,000円(税込)を支払う。
2. 甲は、前項の報酬を、本契約締結後〇〇日以内に、
乙が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。
パターン2: 50%前払い、50%納品後
第○条(報酬および支払期日)
1. 甲は、乙に対し、本契約に基づく業務の対価として、
金500,000円(税込)を支払う。
2. 甲は、前項の報酬を以下の通り分割して支払う。
(1) 着手金: 250,000円(50%)
本契約締結後〇〇日以内に支払う。
(2) 残金: 250,000円(50%)
成果物納品後〇〇日以内に支払う。
パターン3: 3分割
第○条(報酬および支払期日)
1. 甲は、乙に対し、本契約に基づく業務の対価として、
金900,000円(税込)を支払う。
2. 甲は、前項の報酬を以下の通り分割して支払う。
(1) 着手金: 300,000円(33%)
本契約締結後〇〇日以内に支払う。
(2) 中間金: 300,000円(33%)
中間成果物納品後〇〇日以内に支払う。
(3) 残金: 300,000円(34%)
最終成果物納品後〇〇日以内に支払う。
前払いを受け入れてもらえない場合
1. 分割払いを提案
全額前払いが難しい場合
相手が全額前払いに難色を示す場合は、分割払いを提案することで折り合いをつけられます。例えば、50%前払い・50%納品後、または30%前払い・70%納品後といった条件で交渉してみましょう。
2. 代替案を提示
前払いの代わりに
前払いを受け入れてもらえない場合は、代替案を提示することで リスクを軽減できます。例えば、支払期日を短くする(60日から30日へ)、契約書に遅延損害金を明記する、連帯保証人を立ててもらうといった方法があります。
3. 信用調査を行う
前払いを受け入れない相手
前払いを頑なに拒否する相手については、信用調査を行ってリスクを判断することが重要です。調査の結果、リスクが高いと判断されれば、取引そのものを断ることも検討すべきです。
前払い制度導入のチェックリスト
導入前の準備
- 業界の相場を確認(30〜50%が一般的)
- 自社の前払い割合を決定
- 見積書のテンプレートに記載
- 契約書のテンプレートに記載
取引先への説明
- 見積もり段階で前払いを明記
- 契約前に説明
- 理由を丁寧に説明(業界慣習、先行費用など)
- 相手が納得したか確認
契約後
- 契約書に署名・押印
- 前払いの入金を確認
- 入金確認後、業務開始
- 残金の請求書を発行(分割の場合)
よくある質問(FAQ)
Q1: 前払いを要求すると、取引先が離れる?
A: 業界の慣習として説明すれば、受け入れてもらえることが多い。
- 多くの業界で前払いは一般的
- 丁寧に説明すれば、相手も納得する
Q2: 継続取引先にも前払いを要求すべき?
A: 信頼関係があれば、後払いでもOK。
- 継続取引先: 信頼関係があり、後払いでも問題ない場合が多い
- 新規取引先: 前払いを推奨
Q3: 前払いの割合は何%が適切?
A: 30〜50%が一般的。
- 30%: 材料費・外注費を賄う
- 50%: リスク管理の観点
- 100%: リスクが高い案件、EC・物販
Q4: 前払いを受け取った後、キャンセルされたら?
A: 契約書にキャンセル条項を明記。
例
第○条(キャンセル)
甲が本契約をキャンセルする場合、
既に支払った着手金は返金しない。
ただし、乙の責めに帰すべき事由による場合は、この限りでない。
Q5: 前払いの入金がない場合、業務を開始すべき?
A: 入金確認後に業務開始。
- 前払いの入金を確認してから業務を開始
- 入金がない場合、業務を開始しない
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相場 | 30〜50%が一般的 |
| 伝え方 | 業界慣習、先行費用、リスク管理を理由に |
| タイミング | 見積もり段階で明記 |
| 契約書 | 支払条件を明記 |
| メリット | 未払いリスク減、キャッシュフロー改善 |
前払い制度は、未払いリスクを減らし、キャッシュフローを改善する有効な方法です。業界慣習として説明すれば、相手も納得しやすくなります。
免責事項
重要な注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。
- 個別の状況に応じて、適切な対応を選択してください。
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最終更新: 2025年11月12日
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