#時効中断#消滅時効#法的手続き#債権管理

時効中断の方法|消滅時効を防ぐために知っておくべきこと

✍️編集部

この記事は誰のため?

古い債権があって時効が心配、時効を中断する方法を知りたい、催告と承認の違いがわからない、時効成立までどれくらいの期間があるか確認したい。そんな疑問をお持ちの方に向けて、この記事を書きました。

この記事を読むことで、債権の消滅時効を防ぐための具体的な手続きがわかります。


消滅時効の基礎知識

消滅時効とは

消滅時効とは、一定期間、権利を行使しないと、その権利が消滅する制度のことです。債権(未払い金を請求する権利)も、時効により消滅します。

なぜ時効があるのか?

時効制度が存在する理由は、長期間放置された権利を保護しない、証拠が失われた古い権利を争うことの困難性、取引の安定性の確保といった点にあります。つまり、権利を持っているなら早めに行使しないと、いつまでも保護されるわけではないということです。

債権の消滅時効期間(民法改正後)

2020年4月1日以降に発生した債権は、以下の期間で時効が成立します:

原則:

  • 権利を行使できることを知った時から5年
  • または、権利を行使できる時から10年

いずれか早い方で時効が成立します。

具体例

2025年1月31日が支払期日の債権の場合:

  • 「権利を行使できることを知った時」= 支払期日の翌日(2025年2月1日)
  • → 2030年2月1日で時効成立

改正前の時効期間(2020年3月31日以前の債権)

改正前の民法では、債権の種類により時効期間が異なりました:

  • 商事債権: 5年
  • 一般債権: 10年
  • 職業別の短期消滅時効: 1〜3年(弁護士報酬、工事代金など)

時効の起算点

いつから時効がカウントされるか

時効は、支払期日の翌日から起算されます。

:

  • 支払期日: 2025年1月31日
  • 時効の起算日: 2025年2月1日
  • 時効成立日: 2030年2月1日(5年後)

支払期日が定められていない場合

支払期日が契約書や請求書に明記されていない場合:

  • 債権発生時から時効がカウント
  • または、相手が「いつでも払える」状態になった時から

時効中断(更新)の方法

民法改正後、「時効中断」という用語は「時効の完成猶予・更新」に変更されました。

時効の完成猶予と更新の違い

用語 意味
完成猶予 一定期間、時効の完成を先延ばしにする
更新 時効がゼロにリセットされる

時効を止める4つの方法

時効中断方法の比較表

方法1: 裁判上の請求

訴訟を提起したり、支払督促を申し立てたり、調停を申し立てたりする方法です。こうした裁判所を使った手続きを取ることで、時効を止められます。

効果は絶大で、判決確定(または支払督促確定)から新たに10年となり、時効が完全にリセットされます。ただし、費用と時間がかかり、勝訴判決を得る必要があるという点には注意が必要です。

方法2: 強制執行

判決を得て、強制執行の手続きを取る方法です。債務名義(判決など)を取得し、差押えや競売などの強制執行を行います。これにより時効が完全にリセットされ、強制執行手続きの終了から新たに10年となります。

方法3: 承認

相手が債務を認めることです。これが最も手軽な時効中断方法と言えるでしょう。

具体的には、相手が「支払います」と言う(メール、書面、口頭)、一部だけでも支払いを受ける、分割払いの合意書を作成するといった方法があります。費用がかからず、**承認時から新たに5年(または10年)**となります。

ただし、相手が承認しないと使えないという限界があります。また、証拠を必ず残す(メール、録音、書面)ことが重要です。

方法4: 催告(内容証明郵便など)

支払いを請求することです。内容証明郵便で支払いを請求したり、メールや電話での催促も催告にあたります。

ただし、効果は限定的で、催告から6ヶ月間だけ時効が停止(完成猶予)します。6ヶ月以内に裁判などの手続きを取る必要があり、時効はリセットされないという点に注意しましょう。あくまで一時的な時効停止だけです。


時効中断のタイミング

時効成立までの残り期間によって、取るべき手続きが異なります。状況に応じて適切な対応を取ることが大切です。

時効成立までの残り期間別対応フローチャート

時効成立まで1年以上ある場合

まだ時間的な余裕があるので、催促や交渉の段階でOKです。催促メールや電話で支払いを求めたり、分割払いの交渉をしたりしましょう。焦る必要はありませんが、放置は禁物です。

時効成立まで6ヶ月〜1年の場合

時効を意識した行動が必要になってきます。内容証明郵便を送る(6ヶ月の完成猶予)か、相手に「承認」させる(一部支払い、支払約束)ことを検討しましょう。

時効成立まで6ヶ月以内の場合

ここまで来たら、すぐに裁判上の請求が必要です。訴訟または支払督促を申し立てましょう。内容証明だけでは不十分です(6ヶ月後に時効成立してしまいます)。

時効成立まで1ヶ月以内の場合

緊急で裁判手続きを取ります。即座に訴訟または支払督促を申し立て、弁護士に相談しましょう。一刻を争う状況です。


時効中断の証拠を残す方法

時効中断の手続きを取ったことを証明するため、証拠を必ず残します。後になって「やった・やらない」でトラブルにならないよう、しっかり記録を残しましょう。

催告の証拠

内容証明郵便(配達証明付き)が最も確実です。メールの送信履歴や電話の録音(相手の承諾が望ましい)も証拠になります。

内容証明郵便は、いつ、誰に、どんな内容の書面を送ったかを郵便局が証明してくれる制度です。費用は1,500円程度と安価なので、重要な催促の際には活用しましょう。

承認の証拠

相手の「支払います」というメール、一部支払いの振込記録、分割払い合意書(署名・捺印付き)などが証拠になります。口頭で言われただけでは証拠として弱いので、必ず形に残しましょう。

裁判上の請求の証拠

訴状の控え、裁判所からの受領印、判決正本などが証拠になります。裁判所の手続きは公的な記録が残るので、証拠としては最も強力です。


時効援用とは

時効援用の意味

時効援用とは、相手が「時効が成立したから払わない」と主張することです。

重要なポイント:

  • 時効は自動的には成立しない
  • 相手が「時効援用」を主張して初めて効力が生じる

時効援用されたらどうなる?

時効援用されると、債権が消滅し、回収不可能になります。

対策

  • 時効期間内に必ず手続きを取る
  • 相手に時効援用の機会を与えない

実務上のポイント

ポイント1: 時効管理表を作る

債権ごとに、支払期日と時効成立日を記録しましょう。Excelなどで管理すると便利です。

Excelで管理する例:

取引先 債権額 支払期日 時効起算日 時効成立日 残り期間
A社 100万円 2020/1/31 2020/2/1 2025/2/1 要注意
B社 50万円 2023/12/31 2024/1/1 2029/1/1 まだ余裕

こうして一覧表にすることで、どの債権が危険か一目でわかります。

ポイント2: 5年以内に必ず何らかのアクションを

時効成立を防ぐため、5年以内に催促メールや内容証明を送る、承認を引き出す、裁判上の請求をするなど、何らかのアクションを取りましょう。放置は厳禁です。

ポイント3: 「承認」を引き出す

最も手軽な時効中断方法は「承認」です。相手に「支払います」とメールで返信してもらう、分割払いの合意書を作成する、一部だけでも支払ってもらう(1円でもOK)といった方法で、承認を引き出しましょう。費用もかからず、効果的です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 時効期間は5年? 10年?

A. 2020年4月1日以降に発生した債権は、原則5年です。

ただし、「権利を行使できることを知った時」が証明できない場合は、10年となることもあります。

Q2. 催促メールを送れば時効は止まる?

A. 催促メールは「催告」にあたり、6ヶ月間だけ時効が停止します。

ただし、6ヶ月以内に裁判などの手続きを取らないと、時効が成立します。

Q3. 時効が成立したら絶対に回収できない?

A. 原則として、時効が成立し、相手が時効援用を主張すれば回収不可能です。

ただし、時効成立後でも、相手が任意に支払ってくれることはあります(法的な強制力はない)。


まとめ

時効中断方法の比較表

方法 効果 費用 難易度
裁判上の請求 時効リセット、新たに10年 高(数万円〜)
強制執行 時効リセット、新たに10年
承認 時効リセット、新たに5年 なし
催告 6ヶ月だけ停止 低(1,500円〜)

時効管理チェックリスト

  • 債権ごとに時効成立日を記録している
  • 時効成立まで1年未満の債権がある場合、内容証明を送る
  • 時効成立まで6ヶ月未満の債権がある場合、裁判手続きを検討
  • 相手に「承認」させる努力をしている
  • 催告や承認の証拠を保存している

時効は「知らなかった」では済まされません。早めに対策を取りましょう。


次のステップ

時効に関連する手続きについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の状況に応じて、弁護士などの専門家にご相談ください。

最終更新: 2025年11月18日

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