時効中断の方法|消滅時効を防ぐために知っておくべきこと
この記事は誰のため?
古い債権があって時効が心配、時効を中断する方法を知りたい、催告と承認の違いがわからない、時効成立までどれくらいの期間があるか確認したい。そんな疑問をお持ちの方に向けて、この記事を書きました。
この記事を読むことで、債権の消滅時効を防ぐための具体的な手続きがわかります。
消滅時効の基礎知識
消滅時効とは
消滅時効とは、一定期間、権利を行使しないと、その権利が消滅する制度のことです。債権(未払い金を請求する権利)も、時効により消滅します。
なぜ時効があるのか?
時効制度が存在する理由は、長期間放置された権利を保護しない、証拠が失われた古い権利を争うことの困難性、取引の安定性の確保といった点にあります。つまり、権利を持っているなら早めに行使しないと、いつまでも保護されるわけではないということです。
債権の消滅時効期間(民法改正後)
2020年4月1日以降に発生した債権は、以下の期間で時効が成立します:
原則:
- 権利を行使できることを知った時から5年
- または、権利を行使できる時から10年
いずれか早い方で時効が成立します。
具体例
2025年1月31日が支払期日の債権の場合:
- 「権利を行使できることを知った時」= 支払期日の翌日(2025年2月1日)
- → 2030年2月1日で時効成立
改正前の時効期間(2020年3月31日以前の債権)
改正前の民法では、債権の種類により時効期間が異なりました:
- 商事債権: 5年
- 一般債権: 10年
- 職業別の短期消滅時効: 1〜3年(弁護士報酬、工事代金など)
時効の起算点
いつから時効がカウントされるか
時効は、支払期日の翌日から起算されます。
例:
- 支払期日: 2025年1月31日
- 時効の起算日: 2025年2月1日
- 時効成立日: 2030年2月1日(5年後)
支払期日が定められていない場合
支払期日が契約書や請求書に明記されていない場合:
- 債権発生時から時効がカウント
- または、相手が「いつでも払える」状態になった時から
時効中断(更新)の方法
民法改正後、「時効中断」という用語は「時効の完成猶予・更新」に変更されました。
時効の完成猶予と更新の違い
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 完成猶予 | 一定期間、時効の完成を先延ばしにする |
| 更新 | 時効がゼロにリセットされる |
時効を止める4つの方法

方法1: 裁判上の請求
訴訟を提起したり、支払督促を申し立てたり、調停を申し立てたりする方法です。こうした裁判所を使った手続きを取ることで、時効を止められます。
効果は絶大で、判決確定(または支払督促確定)から新たに10年となり、時効が完全にリセットされます。ただし、費用と時間がかかり、勝訴判決を得る必要があるという点には注意が必要です。
方法2: 強制執行
判決を得て、強制執行の手続きを取る方法です。債務名義(判決など)を取得し、差押えや競売などの強制執行を行います。これにより時効が完全にリセットされ、強制執行手続きの終了から新たに10年となります。
方法3: 承認
相手が債務を認めることです。これが最も手軽な時効中断方法と言えるでしょう。
具体的には、相手が「支払います」と言う(メール、書面、口頭)、一部だけでも支払いを受ける、分割払いの合意書を作成するといった方法があります。費用がかからず、**承認時から新たに5年(または10年)**となります。
ただし、相手が承認しないと使えないという限界があります。また、証拠を必ず残す(メール、録音、書面)ことが重要です。
方法4: 催告(内容証明郵便など)
支払いを請求することです。内容証明郵便で支払いを請求したり、メールや電話での催促も催告にあたります。
ただし、効果は限定的で、催告から6ヶ月間だけ時効が停止(完成猶予)します。6ヶ月以内に裁判などの手続きを取る必要があり、時効はリセットされないという点に注意しましょう。あくまで一時的な時効停止だけです。
時効中断のタイミング
時効成立までの残り期間によって、取るべき手続きが異なります。状況に応じて適切な対応を取ることが大切です。

時効成立まで1年以上ある場合
まだ時間的な余裕があるので、催促や交渉の段階でOKです。催促メールや電話で支払いを求めたり、分割払いの交渉をしたりしましょう。焦る必要はありませんが、放置は禁物です。
時効成立まで6ヶ月〜1年の場合
時効を意識した行動が必要になってきます。内容証明郵便を送る(6ヶ月の完成猶予)か、相手に「承認」させる(一部支払い、支払約束)ことを検討しましょう。
時効成立まで6ヶ月以内の場合
ここまで来たら、すぐに裁判上の請求が必要です。訴訟または支払督促を申し立てましょう。内容証明だけでは不十分です(6ヶ月後に時効成立してしまいます)。
時効成立まで1ヶ月以内の場合
緊急で裁判手続きを取ります。即座に訴訟または支払督促を申し立て、弁護士に相談しましょう。一刻を争う状況です。
時効中断の証拠を残す方法
時効中断の手続きを取ったことを証明するため、証拠を必ず残します。後になって「やった・やらない」でトラブルにならないよう、しっかり記録を残しましょう。
催告の証拠
内容証明郵便(配達証明付き)が最も確実です。メールの送信履歴や電話の録音(相手の承諾が望ましい)も証拠になります。
内容証明郵便は、いつ、誰に、どんな内容の書面を送ったかを郵便局が証明してくれる制度です。費用は1,500円程度と安価なので、重要な催促の際には活用しましょう。
承認の証拠
相手の「支払います」というメール、一部支払いの振込記録、分割払い合意書(署名・捺印付き)などが証拠になります。口頭で言われただけでは証拠として弱いので、必ず形に残しましょう。
裁判上の請求の証拠
訴状の控え、裁判所からの受領印、判決正本などが証拠になります。裁判所の手続きは公的な記録が残るので、証拠としては最も強力です。
時効援用とは
時効援用の意味
時効援用とは、相手が「時効が成立したから払わない」と主張することです。
重要なポイント:
- 時効は自動的には成立しない
- 相手が「時効援用」を主張して初めて効力が生じる
時効援用されたらどうなる?
時効援用されると、債権が消滅し、回収不可能になります。
対策
- 時効期間内に必ず手続きを取る
- 相手に時効援用の機会を与えない
実務上のポイント
ポイント1: 時効管理表を作る
債権ごとに、支払期日と時効成立日を記録しましょう。Excelなどで管理すると便利です。
Excelで管理する例:
| 取引先 | 債権額 | 支払期日 | 時効起算日 | 時効成立日 | 残り期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 100万円 | 2020/1/31 | 2020/2/1 | 2025/2/1 | 要注意 |
| B社 | 50万円 | 2023/12/31 | 2024/1/1 | 2029/1/1 | まだ余裕 |
こうして一覧表にすることで、どの債権が危険か一目でわかります。
ポイント2: 5年以内に必ず何らかのアクションを
時効成立を防ぐため、5年以内に催促メールや内容証明を送る、承認を引き出す、裁判上の請求をするなど、何らかのアクションを取りましょう。放置は厳禁です。
ポイント3: 「承認」を引き出す
最も手軽な時効中断方法は「承認」です。相手に「支払います」とメールで返信してもらう、分割払いの合意書を作成する、一部だけでも支払ってもらう(1円でもOK)といった方法で、承認を引き出しましょう。費用もかからず、効果的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 時効期間は5年? 10年?
A. 2020年4月1日以降に発生した債権は、原則5年です。
ただし、「権利を行使できることを知った時」が証明できない場合は、10年となることもあります。
Q2. 催促メールを送れば時効は止まる?
A. 催促メールは「催告」にあたり、6ヶ月間だけ時効が停止します。
ただし、6ヶ月以内に裁判などの手続きを取らないと、時効が成立します。
Q3. 時効が成立したら絶対に回収できない?
A. 原則として、時効が成立し、相手が時効援用を主張すれば回収不可能です。
ただし、時効成立後でも、相手が任意に支払ってくれることはあります(法的な強制力はない)。
まとめ
時効中断方法の比較表
| 方法 | 効果 | 費用 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 裁判上の請求 | 時効リセット、新たに10年 | 高(数万円〜) | 高 |
| 強制執行 | 時効リセット、新たに10年 | 高 | 高 |
| 承認 | 時効リセット、新たに5年 | なし | 低 |
| 催告 | 6ヶ月だけ停止 | 低(1,500円〜) | 低 |
時効管理チェックリスト
- 債権ごとに時効成立日を記録している
- 時効成立まで1年未満の債権がある場合、内容証明を送る
- 時効成立まで6ヶ月未満の債権がある場合、裁判手続きを検討
- 相手に「承認」させる努力をしている
- 催告や承認の証拠を保存している
時効は「知らなかった」では済まされません。早めに対策を取りましょう。
次のステップ
時効に関連する手続きについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の状況に応じて、弁護士などの専門家にご相談ください。
最終更新: 2025年11月18日
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